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【映画】ザ・ベイ/こんなことはありえない、とは言えない恐怖がここにある

2016/07/24

簡単なあらすじ

舞台はアメリカのチェサピーク湾にある小さな田舎町。独立記念日で町中がお祭りムードになっている7月4日、惨劇が起こります。

その日を思い返して語るのは、レポーターのドナ。町のイベントを1日レポートする予定だったのですが、町の異常事態に直面し、結果それを追いかけることになります。
惨劇の前兆は数ヶ月からありました。チェサピーク湾の水質調査を行っていた海洋学者2名の遺体が発見されたのです。彼らはチェサピーク湾の水質汚染が深刻であることをたびたび町長に報告していました。

そして、独立記念日。イベントを楽しんでいた女性の叫び声が大通りに響きわたります。体に異常な発疹が表れ、助けを求める女性。病院には同じような異常を訴える人々が次々と来院しだします。病院では感染症を疑います。
同じ頃、内臓を引き裂かれ、舌が引きちぎられた遺体が発見されます。殺人として警察が捜査を始めるのですが……。

という感じ。不穏。

ザ・ベイ

2012年 アメリカ
監督:バリー・レヴィンソン
出演:ケッテル・ドナヒュー、クリステン・コノリー、スティーヴン・クンケン

※ネタバレを含む感想ですのでご注意下さい。

POVであることを最高に生かした、本気のフェイク・ドキュメンタリー

そろそろ乱発しすぎじゃないの? という気がしてくるPOV映画。しかしこの作品は一線を画しています。

POV方式ではありますが、惨劇の起こった現場で回収された映像を編集した、という形式のフェイク・ドキュメンタリーです。ホラーではもはや定番となったこの方式ですが、抜きん出た作品です。完成度が違う。

主人公のドナの取材映像、町中の監視カメラ、パトカーに設置されているカメラ、iPhoneで撮影された動画、Skype、個人撮影のカメラなど、惨劇が起きる町の人々を撮影した映像がフルで使用されます。

撮影隊のドナたちだけに焦点を当てていたら、どこにでもあるようなPOVになっていたでしょう。過去の検証映像などをもりこみ、きちんとしたドキュメンタリー映像として完成させているのです。
その映像は、いったい町でなにが起こったのかを淡々と映し出していくものでした。

様々な視点で映し出される惨劇に加えて、海洋学者たちのレポート、医者と疾病対策センターとのSkypeでだんだんと原因が分かってきます。

原因追求が放ったらかしにされやすいPOV映画ですが、「ザ・ベイ」はしっかりとドキュメンタリーとしてまとまっているので、不満は残りませんでした。分かりやすい勧善懲悪的なことはないし、「解決!」という着地点がないので、ぜんぜんすっきりはしない話ですけど。

観た後に感想をあちこちで読んでみたのですが、評価はまっぷたつですね。
派手さは薄いのと、ストーリーらしいストーリーがない、というのを欠点と取るかどうかかなと思います。

わたしはむしろ、この淡々とした話運びがすごく怖かったです。
「オープン・ウォーター」と似た恐怖感ですね。実際ありそうで怖い。

本気でネタバレるよ!

ウイルスと思ったらなんか新種の寄生虫だったよ! てことでしたが、造形がまたリアルー。

海洋学者は寄生されたのかと思いきや、成虫の中に飛び込んでもりもり喰われたわけね……うひー。
生きたまま内側と外側から食われるって最悪です。

この話がホラーたるゆえんはやはり演出でしょうか。

死体がグログロなのと、生きたまま体内から喰われる、というので大分食べられても生きてたりするのがショッキングです。

町の住民たちそれぞれが残す映像がちょいちょいリンクしたりして、あーこの警察のひとたちはあのおじさんのとこに行ったのかな? など想像力をフルに働かせるのが楽しむポイントです。

海に飛び込んで襲われて行方不明になったカップルは、海洋学者と同じく、成虫の群がいる海域に運悪くあたっちゃったんだろうな。

最後まで引っ張るヨットで家族のところに向かってた夫婦の扱いがうまいですね。
さんざん惨劇が起こる町とそれとはちょっと離れている夫婦。でも旦那が海に落ちたりして、観てるこっちは「あー……やばいな」と思わされたり。

無事に到着するも、すでに町はゴーストタウン化してて、周り中死体。
パニックになりつつ避難した無人の店で休んでいたら旦那に発疹が!

あとはもうお察しの通り。きっとこの人たちは……という想像力を働かせる演出でした。編集が上手いんだよなぁ。

この恐怖感はなんだろう

亡くなった人たちもほとんどが、一体なにが起きているのかが分からないままだっただろうと思うと、それが本当に怖い。

幽霊、ゾンビ、悪魔、ホラー映画では様々な「怖い」対象が現れます。
ホラー映画を愛好していると、最初の頃は怖いと感じていたものでも、次第になれていきます。

いろんなお約束があり、セオリーがあります。それが分かると楽しい反面、やはり映画の見方としては邪道ではありますよね。話に没入できないのもなんだか残念だし。

わたしは久々にすごい恐怖感を味わいました。

そこはやっぱりリアリティがあったことでしょう。寄生虫が人間を体内から食い尽くす、なんてあるわけないじゃん!といえばそうですけど、ないとは言い切れないじゃないですか。その否定しきれない部分がポイントかと思います。

断片的に組み合わされる住民たちそれぞれの経緯、奮闘するも寄生虫の猛威に為すすべもない医者、通報を受けても救うすべを持たない疾病対策センター。

そして往々にして全く役に立たない権力者。町長ひでーなコレ。

スーパーヒーローはいない。解決に奔走する人も、犠牲者となる。
もはやなにをどうしたらいいのかわからない、そして助けを求める相手すらいないこの状況は絶望としか言いようがないです。

そしてそれを「お話です」で終わらせられない危機感を持たせる説得力がある映画でした。

ネタバレ注意の表記を書きましたが、ストーリーとか、お話の展開が、とか言うタイプの映画ではありません。淡々とひとつの町が崩壊してゆくのを映し出す映像は1度観ておいても損はないと思います。ストーリーのネタバレだけ読んでもこの映画のすごさは分かりません。

ただ、なんとも言えない後味の悪さを受け入れる精神状態の時に観ることをおすすめします。

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