つぶらいん

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小説

【小説】Another アナザー/綾辻行人にしか書けなかった、ホラーとミステリの融合

2016/10/10

簡単なあらすじ

父の仕事のつごうで祖父母のいる夜見山市の中学校に転校してきた榊原恒一。初登校を控えた夜、持病の発作で入院をする事になってしまいました。その病院のエレベーターで恒一が通うはずだった中学校の少女と出会います。
無事に退院した恒一は予定通り夜見山北中学校に通う事になるのですが、転入した3年3組はどこか緊張感が漂っています。そして、そこで恒一は病院でであった少女、見崎鳴と再会するのですが、クラスメイトたちは鳴がまるでいないかのような不可解な言動をしています。
3組に漂う微妙な空気に、恒一は状況を知ろうと鳴に接触するのですが……。

わたしが書くあらすじなんてカスです。あらすじなんぞにこの作品の良さは集約されない! 未読ならネタバレ踏まずにとっとと本編を読みましょう。
すごいよこれ。

ガチのオチは書きませんが、ある程度作品の内容に触れてしまいます。本編を楽しむなら全く知らない方が良い事もあります。外しませんので読んでいない方は本編をお楽しみの上お進み下さい。

謎解きとホラーの融合。本格ミステリ作家、綾辻行人だから書けた傑作。

この小説はホラーかミステリか、と問われれば「ホラーだ」と答えます。ただし、根底に本格ミステリがガッツリ編み込まれていて、これがこの作品の魅力でもあります。

ホラーでありながらも、読者を物語へ引き込むのは謎です。
夜見山北中学校へ転校してきたばかりの恒一と一緒になって「一体このクラスでなにが起きているのか」に頭を悩ませる事になります。
明らかに何かを隠している風のクラスメイトたち、生徒どころか教師にまで「いないもの」として扱われている見崎鳴。いじめなのか、と思いきやそういう雰囲気でもない。なにしろ当の鳴がケロッとしてそれを享受している。

どういうことのなのかと鳴と接触すると肝心なところで邪魔が入ります。情報の断片ますます不安を煽ります。

3年3組を覆う死の予兆は生徒と教師に暗い影を落とします。
いつ、だれが、だれの家族が、親戚が死んでしまうかわからない、という不安に押しつぶされ暴走するのすら、何かの後押しがあるように思えます。理不尽な呪いなんですが、ただ彼らはそれを拒絶することもできず、そしてだれにも話すことができずに過ごすしかないのです。

学校ぐるみで超自然的なものを信じ、そのために決め事をし1年を過ごす、というなかなかに不可解な状況です。まぁ自分が恒一の立場だったら信じられないところではありますが、そこで生きてくるのが綾辻行人のミステリの腕です。

この状況を作り出すプロットが秀逸なんですよね。
26年前のあるきっかけがあり、それが原因で3年3組の生徒及び関係者に死者が大量に出るようになる。それを防ぐための策があり、それが今年も粛々と行われようとしていたところに転校生である主人公が登場。本来きっちり説明して協力させる予定が緊急入院でタイミングを逃してしまう。
それも「見崎鳴をいないものとして扱う」ということなので、ことが始まってしまった後に恒一に鳴のことを説明しようとすると鳴の存在を認めることになってしまう。そうするとどうしても曖昧な対応になってしまって……と、図らずも恒一の存在が今年の3年3組を惨劇に引き込む結果になってしまっているかのような状況に……。そしてそれに恒一自身が悩む事になるわけです。

恒一が置かれた状況を理解すると、今度は「だれが紛れ込んだ死者なのか」が命題になります。図らずも、惨劇を止める方法を掴んだことで、それはより重要な命題になっていきます。

本人にも自覚がない「死者」はお互いの疑心暗鬼を生み、そしてそれは自分自身にすら向ける事になるのです。

「 Another」の魅力は登場人物たちでもあります。主人公の恒一は病気を抱えているものの、そこそこ行動力があります。感情移入がしやすい頭も回る男の子。そしてヒロイン、見崎鳴。いや、彼女の存在は大きい。すごく大きい。

「いないもの」として扱われる事もそのまま受け入れる彼女は、一見感情が薄いようにも取れます。が、読み進めていくうちに、彼女自身も色々な想いがあり、どこか使命感すら帯びているようにも感じられました。生い立ちに関しても、複雑な感情があるようですが、それについてはあまり自分の想いは口にする事はありません。そういうところもまた魅力的なんですよね。

やっぱり綾辻スゲー

高校生の頃に「十角館の殺人」を読んで以来のファンです。わたしがPSを買うきっかけになったのは「 YAKATA」がやりたかったからなんですよ! リアルに館シリーズを味わえる! といそいそと購入しました。楽しかったなぁ……。友達に貸して返ってこないんだよね。大事なものは貸しちゃいけないよね。うん。

世間的にはミステリ作家でしょうが、わたしは綾辻行人の持つホラー的側面がすごく好きです。館シリーズも好きなんですが、よりホラー色が強い囁きシリーズも大好きなんです。「緋色の囁き」が大好きでしてね……。

ゴッテリホラーを楽しみたいなら「殺人鬼」シリーズがオススメです。こちらもゴリッゴリのスプラッタホラーでありながらもミステリの側面もあり、一粒で二度美味しい的な作品。

ただまぁタイトル通りの作品なので、普段の綾辻を期待してると大分痛い目みます。いつもよりグロ描写が5割増ぐらいになってますのでご注意を。

コミカライズがまた素晴らしいんです!

清原紘さんの美麗な絵で再現される綾辻ワールド最高です。

鳴が本当に鳴で可愛いんですよ。あまり感情を表に出さないミステリアスさを残しつつ、ちょっと嬉しいのが表に出た時の表情がたまらなく可愛い! 4巻目で皆で写真撮ろうって呼ばれたときの鳴が可愛いんですよね。あのコマお気に入りです。

原作とは若干違う展開をしますが大筋では一緒です。クラスメイトの赤沢が本筋に絡んできたりするので、そのあたりも注目です。

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