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小説

【本】「神鳥 ーイビスー」篠田節子/美しさと怖さは紙一重。

簡単なあらすじ

花鳥画を描く画家、河野珠枝をモチーフにノンフィクションを執筆しようとする作家の美鈴慶一郎からの依頼で装画を担当することになった葉子。
どこか恐ろしさを秘めた朱鷺の絵に惹かれるものを感じながら、葉子は美鈴と珠枝について調べ始めます。珠枝をモチーフに映画を撮った女性監督は「私は間違えた。珠枝は恐ろしい絵描きです」と書き置きを残して自殺していて、珠枝自身も凄まじい最後を迎えています。

それぞれの死に隠された謎とは……?
珠枝の朱鷺の絵に秘められたものは一体なんなのか?

仕事に行き詰まる挿絵画家と干される寸前のバイオレンス作家。崖っぷちの2人が探る真相とは……?

作品の内容に触れるので嫌な方はご注意!

 

美しいものは恐ろしい。その紙一重を描く。

篠田節子さんは幅の広い作家さんで、ジャンル不問でいろんなものを書かれます。「ハルモニア」のイメージが強かったので、ホラー的なものを書かれていることが意外でしたが、調べてみると以外とこのジャンルも多いようですね。

美しい花鳥画とそこに秘められたおぞましいもの。割と早い段階で河野珠枝が「なにを」描いていたのかがわかります。

作品の性質上、ヒッチコックの「鳥」が思い浮かびますが、あのわけのわからなさに比べて、こちらは主体がはっきりしていて「食う」ために襲ってくるあたりが化け物具合の性質が強いですね。あっちは集団の怖さでもあるので怖さの根源が違う気がします。恐ろしく凶暴で力強い朱鷺は凄まじい存在感です。

作中で主人公たちが朱鷺を見に佐渡に渡りますが、そこで見た朱鷺と珠枝の描く朱鷺のギャップに驚きます。獰猛な肉食獣めいた朱鷺はそこにはもちろんおらず、特別天然記念物の哀愁みたいなものすら漂っています。
落胆して戻るものの、新たな手掛かりを得て奥多摩へと向かった2人が踏み入った場所で遭遇した相手はあの珠枝の描く朱鷺でした。

滅びへと向かう朱鷺の最期の抗いとも取れるような狂乱した空間。そこから死に物狂いで脱出した珠枝。同じ場所に足を踏み入れたとも割れる金田史子。そして同じルートを辿った主人公たち。見てはいけないものを見、こんな目に遭わなければよかったとも思える体験をするわけですが、これが彼らにとって必ずしも不幸であるとも言い切れません。
現状の行き詰まりを脱するために、この上ないものをもたらしたのかもしれないとすら思わされます。

余談ですが、河野珠枝は「写実的な画家」だった、というのがどういう意味を持っていたのかが読み終えるとよくわかりますね。

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