つぶらいん

本や映画のレビューを中心にしつつ、ぼっち&出不精生活を満喫する管理人の日常のブログです

小説

【小説】怪しの晩餐/自分の名前が記載された謎の名簿。これは殺人リストなのか……?!

2016/06/08

あらすじ

名簿を売買することを生業としている折原。
買い取った名簿の入力をしていると、そこに見覚えのないものが含まれていることに気づきます。なんの記載もないその名簿には、自分の情報が記載されており、心当たりが全くありません。
不気味に感じていたところ、その名簿に掲載されている男が殺人事件の被害者であることが分かります。調べてみると、なんとその他に3名が同じ事件の犠牲者であることが判明しました。

事務員の美也に促され、名簿に載る残りの人々を訪ねるのですが……。

牧野修の怪作です。「記憶の食卓」を改題して文庫版として発行されました。

謎の名簿に自分の情報が載っているという不気味な始まり

主人公の職業そのものがうさん臭いのがポイント。名簿やと言う完全に個人情報保護的に引っかかる商売をしている折原。そこにさらに出所も目的も不明な名簿が出てきて自分の情報が載っているのを発見します。
こういう情報はどこからでも漏れる、と本人が語る通り、折原自身、自分が乗っている正体不明の名簿を発見するまではその違法性などは気にしていませんでした。目の当たりにして始めて、その気味が悪さを自覚しています。

名簿屋という商売自体は大変怪しいものですが、折原自身はというと、どこか生真面目な印象です。気が弱いのか、尻に敷かれているのか、事務員の美也の強引さには逆らえずにいます。そこなんだかかわいく見えて、好感の持てる主人公です。おかげで読みやすい!

主人公、折原の名簿の調査と同時進行で語られるいけ好かない小学生、遠藤悟一の話

一方、もうひとりの主人公ともいえなくもない遠藤悟一は折原とは違ってなかなかに好感が持てません(笑)。

遠藤悟一の物語は子どもらしいわがままさと、斜に構えた語り口が絶妙のイライラ加減を醸し出します。
悟一自身の鬱陶しい自尊心もありますが(褒めてる)、悟一になぜか絡んでくる同級生の田辺がまたウザい。

一体、折原のはなしと、この悟一の話がどう絡むのかがサッパリ分からないまま終盤まで物語は進行していくのですが、物語の重要なパートですので忍耐あるのみです。読み飛ばさないでくださいね!

記憶と摂食障害

折原と同じくリストに名前のある飯田、遠藤、柳田は重度の摂食障害と言えるほどに酷い状態です。
折原と同様にリストを送られ、困惑している人もいれば、折原に対してヒントにもならない思わせぶりな発言をする人もいます。

この話は出てくる人々がことごとく何らかの摂食障害を起こしています。タイトルからも察せられるように、「食べること」が重要なテーマとなっています。
そして、もう1つの大事なキーワードが「記憶」です。

「記憶」と「食」そして「ホラー」なんだか嫌な予感がする組み合わせですね。食前、食後にはあまりおすすめいたしませんので、胃袋が安定している時にお読み下さい。

なぜ、リストに記載されている人々は殺されているのか、自分も狙われているのか、犯人は一体……? とミステリ的な要素もありますが、まともな推理をする本ではありません。下手な推理は不要!
一筋縄ではいかない作品ですので、作者の思うままに翻弄されるのを推奨致します。そうすれば、結末まで二転三転するストーリーを存分に楽しめると思います。

そしてわたしはこの主人公の折原がけっこう好きなんですよね。なんだか不器用なピュアさがいい。あの結末のくだりもいい。「蠅の女」を読んだ時にも同じのを感じました。牧野修さんだと「蠅の女」もオススメです! ただ、Kindle化していない!

 

-小説,
-