つぶらいん

本や映画のレビューを中心にしつつ、ぼっち&出不精生活を満喫する管理人の日常のブログです

映画 邦画

【映画】回路/淡々と浸食され、日常が崩れていく恐怖を描く。黒沢清監督作品。

2017/01/23

昔観た時は意味が分かりませんでしたが、今観るとそこまで難解でもありませんでした。昔のわたしの理解力……。

けっこう親切に色々と解説してくれていて、武田真治演じる役の人(大学生?)が発端から(予測)きっちり教えてくれます。親切だなー。でもわたし全然覚えてなかったわ……。記憶力にも絶望する。

インターネットの設定のシーンに時代を感じますね。

あらすじ

連絡が取れなくなった同僚の田口を心配し、家を訪ねたミチ。田口はミチと言葉を交わした後すぐに首を吊ってしまいます。仕事で使う資料を田口から預かっていたミチは、同僚にそのフロッピーを渡すのですが、その中には田口の部屋を撮影したと思われる不可解な映像が紛れ込んでいました。
様子がおかしくなっていく同僚を心配するミチでしたが、彼は不可解な言葉を口にするだけでどうしていいのか分かりません。

一方、大学生の川島はインターネットの接続設定の途中、意味不明なサイトへと繋がってしまいます。そこには「幽霊に会いたいですか」という文章が現れ、どこかの部屋を写した映像が流れ始めます。気味が悪くなった川島はすぐに消してしまいました。
その後大学の理工学部を訪ね、そこで出会った春江に協力してもらうようになります。春江にデータを渡し、解析を頼むのですが春江の様子がどんどんおかしくなっていってしまいます。

静かに迫ってくる恐怖が秀逸な作品。

回路

2001年 日本
監督:黒沢清
出演:加藤晴彦、麻生久美子、小雪、有坂来瞳

崩壊はいつの間にか忍び寄る

何本か黒沢監督の映画を見ていますが、毎度毎度、個性的な幽霊の描き方に驚きます。昨今ドーンと幽霊を画面上に出すのが珍しくなくなりました。それでも、今見てもやはり斬新です。実在と非実在の境目みたいな存在が、妙に存在感をもって映し出されるのには釘付けになります。

主人公たちの視野の隅にいる彼らを映し出し、見る側に違和感を与える演出は巧みで、薄暗がりな画面でも、こちらは目を凝らしてしまいます。ちょっと目を離した隙に「なにか」がそこに映るんじゃないか、という緊張感があるので、グイグイ引き込まれます。

どんどん人が減っていく世界で、画面に映る人影は果たして本当に人なのか、それとも彼らなのか、一瞬判断が付きません。そこにはっきりと存在するからこその区別のつかなさが恐怖へと繋がります。

終盤、川島が観るテレビの画面で淡々と死亡者を放送しているシーンがあります。
あれはどう考えても生きている人間が放送している物ではないと思うんですけど、そこに関しても触れられません。

増殖した死者たちが一体なにがしたいのか。それに関しても多くは語られません。誰もそれを知るはずがなく、語られることも、予測でしかありません。彼ら自身の口から明確な物を得ることはできないのだから当然なのです。

最後まで残る細かな謎がこの作品の魅力とも言えるでしょう。

良くも悪くも、普通な登場人物たちが物語のリアリティを増す

川島が好意を抱く春江はどこか死に取り憑かれている印象です。後半川島に語る自分が子供の頃から囚われている考えを語りますが、彼女は元々それがあったからこそ、あのときコンピュータ室で「幽霊に会いたいですか」という話をしている川島に声をかけたのでしょう。

いいやつだけど、終始ずれている川島がだんだん可哀想になってきます。一生懸命で、春江のために駆け回るも、報われることもなく、意味が分からないまま翻弄されるだけ。

川島は春江に好意を抱いてますが(そりゃそうだ美人だもん)、春江の方はどうだったのでしょうか。対話という意味では春江の方からアプローチしている状況ですが、好意はあまり感じられません。どちらかと言うと、前述した春江の子どもの頃からの「死」への探究心があったからこそ、湧いた興味にも感じられます。そこに答えがあるんじゃないか、という。
だから尚更、単純に春江に好意を持っている川島が空回りしているみたいで可哀想になるんですよね。

川島もミチも生き残る確たる理由がありません。どんどん人が消えていくなか、生き残るスキルがあるとは思えません。無自覚に消えてしまった人々との違いは、異変に気付いていたこと……? それともただ単に運なのか。

川島とミチの共通点と言えば、ふたりとも根気よく人のために動いていたことでしょうか。ミチは社長から諌められるような言葉をかけられましたが、それを振り切って同僚の力になろうとしています。目の前で田口が自殺したことも関係あるでしょうが、ミチは何もせずに相手を失いたくないという気持ちは強いように感じます。
ただそれが特別強かったりするわけはないので、これが決め手!とはいえないですね。

ごく普通の、どこにでもいそうなキャラクターなんですよね。もしかすると、特別じゃない主人公たちを据えたっていうのも意図的なのかもしれません。

色々と余談

回線を通して恐怖が広がっていくのですが、古いパソコン設定とかに気をとられて困りますね。フロッピー! 懐かしい! みたいな。貞子のビデオテープ的な。時代って怖いですね。
ま、そういうところ突っ込むのもヤボなので、極力スルーしましょう。

海外リメイク版の「パルス」はさらに分かりやすくホラーとして仕上がっているのがよくわかります。電波に乗って彼らがやってくるのも、そうですし、どういう経緯で、とか、彼らを消滅させる(?)方法というのも呈示されます。

「パルス」の記事はこちら

絶望の度合いが大きいのは邦画の方でしょうか。
ミチも川島もコンピュータに詳しいわけでもありません。あれを食い止める秘策が呈示されることもありません。
観終わった後に残る安心できないぼんやりした感情は、邦画の方でしか味わえません。

どちらもまだでしたら、わたしは邦画をおすすめします。

ちなみに、「回路」の方はAmazonプライムビデオで配信されております。プライム会員なら無料で観れます。
黒沢清監督の「CURE」もプライムビデオ対象ですね。他の作品も追加されると嬉しいのですが……。なんだか無性に「叫」が観たい。

-映画, 邦画
-