つぶらいん

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小説

【小説】八月の降霊会/突然降霊会へ招待された人々に隠された過去とは……?

2017/01/23

若竹七海というと本格ミステリーの書き手というイメージが強いですが、ホラー小説やパニック小説なども手掛ける幅広い作家です。

この話の難しさは、とにかく物語が進んでいくにつれて、これがミステリーなのかオカルトなのかがわからなくなってくることです。だいたいの本は少なくとも半分も読めば物語のジャンルがわかります。特にホラーはそうですよね。それが物語が佳境に入ってもぎりぎりわからないんですよ。

語り手が次々に変わるのも翻弄されるポイントですね。それぞれの思惑が入り交じり、何が本当なのかがだんだんとわからなくなってきてしまいます。衝撃的なラストまで一気に読んでしまうはず。

あらすじ

作家の秘書を務めている渡部司は、雇い主である南澤秀子から知人の水屋征児から招かれた降霊会に同行するように言われます。困惑する司でしたが、仕事であれば仕方がないと同行を決めます。
場所は水屋家の別荘で、司たちの他に霊媒師の母娘、占い師の夫婦、水屋征児の2人の甥、水屋家と取引のある老舗百貨店の社長です。
近隣に他の建物のない場所にある別荘には、今回雇われた執事、給仕のメイド、料理人がおり、別荘に向かう麓には管理人が常駐しています。

集められたメンバーに困惑する司でしたが、その日の夜早速降霊会が行われます。そこで霊媒はそれぞれの亡くなった身内からの伝言を伝え、降霊会は滞りなく終えたかと思われました。
ところが、水屋が霊媒師がイカサマではないことを証明するために、給仕で雇われた女性の望む相手を降霊をすることを提案。承諾した霊媒師が彼女の父親を呼び出したところ、その口からは思いがけない事件の真相が語られ始め……。

八月の降霊会/若竹七海

問答無用で面白いのですが、このお話を説明するはとても難しい!

降霊会に招かれた面々はいかにもうさん臭いです。そのうさんくささが、オカルト色を排していると言ってもいいほど、俗な人物たちが続きます。

そんな人々もどういう共通点があるのかがよくわからないまま話が進んでいくので、読み手側も彼らと同じように、置かれた状況を探りつつ読み進めるようになります。
招待者である水屋征児がなにかを企んでいるっぽいのはうっすら感じるのですが、当然ながら彼は自分の目的に関して核心は話そうとはしません。

様々な事実が判明していきながらも、物語の骨はなかなか姿を現さないのです。

招待客たち

霊媒師の娘であるいずみは、母がちゃんと霊媒として務まるのかを心配し、常にフォローしています。職業柄疑いの目を向けられるのは慣れているのでしょう。最初の頃は常に周囲に張りつめた視線を向けている印象です。
聡明な子なので、司とうちとけて色々と情報を交換するようになります。
お母さんである霊媒師の美鶴はと言うと、ちょっとつかみ所がない人という感じ。詐欺師なのか、本物なのか、こちらの判断も難しい人でした。いずみが一生懸命なので、お母さんのポイントも加算されるという不思議な状態になります。

一方、征児の甥である水屋寧(ねい)と水屋智も伯父が一体どういうつもりなのかを探っています。
ふたりの話を総合すると、突拍子もないことをして一族を振り回すのは征児のいつものことのようです。それでも、いきなり降霊会と聞いて興味を持っています。この別荘の来歴を調査したりと、ふたりとも何か思惑があって伯父に探りを入れています。

占い師の夫婦は、詐欺罪で逮捕経験もあるうえに、最近では常連だった老婆の死亡事件で疑われたりと、かなり怪しいです。霊媒師の美鶴とも面識があるようです。

司の雇い主である秀子は多くを語りません。水屋の友人ということしか説明がなく、どこか夢見がちでなにを考えているかよく分からないひとです。

こんな濃い中にひとりかなりの俗物とも思える、百貨店社長の安達。秘書と不倫したいと思ってたり、出世のために汚いこともやっていたりと、よくいるフツーの偉いおじさんという印象。

さらに、雇われている執事、給仕、コックといるわけです。彼らも何か含む物があるようで、どいつもこいつも怪しい。フツーの人がいない! 割と一般の感性なのは司でしょうかね。

様々な事件が絡み合い、結末へと導いて行く

全員が集まったこの水谷家の別荘には、かつて征児の父の愛人が住んでいたと言います。彼女には娘がいたのですが、現在母子ともに行方が分からなくなっています。彼女たちの行方が分からなくなって以降、この別荘は封印されるように使われなくなってました。

給仕として雇われた田中逸子は父親が誘拐犯として逮捕されています。その父は拘留中に自殺し、誘拐された子どもは見つからないまま、事件は幕を閉じました。逸子自身は父の無実を信じています。征児は、降霊の際にイカサマを疑われることを考慮して、逸子の父を呼び出すことを提案するのです。

霊媒師として呼ばれた真名木美鶴と娘のいずみにも忘れたい過去があります。
美鶴は以前関係のあった男を「呪い殺す」と公言し、その結果その男が死亡しています。疑われたものの、呪いを公言し、念を送る儀式の最中に相手が死亡しているためアリバイが成立しています。

他にも占い師の夫婦は詐欺罪の前科があったり、社長の安達も出世のために危ない橋を渡っているようです。

怪しい人物たちに怪しい過去、それだけでもかなりの圧がある感じですが、ここでさらに殺人が起こるからさぁ大変。
読み手はその殺人が気になりつつも、関係者の人間関係や、各々の狙いがどこにあるのか、など思考があっちこっちに持って行かれます。

この手の本でのオススメは、もう翻弄されるままに読み進めるのが一番です! 余計な推理とかいいから、作者の思惑にどっぷり浸かって楽しみましょう。

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