つぶらいん

本や映画のレビューを中心にしつつ、ぼっち&出不精生活を満喫する管理人の日常のブログです

小説

【小説】舟を編む/辞書編集に人生をかける人々の熱さに憧れる

2017/01/23

基本が人が死ぬ小説ばかり読んでいるので、物騒なことが起こらないのに不思議な感慨を抱きつつ読むことになりました。
本屋大賞は知っていましたし、受賞作品の確実さを考えるともっと早く読むべきだった……という後悔がムクムクと湧いてくる一冊です。他の小説はいくつか読ませていただいてるので、自分が読んでいなかったのも不思議なんですよね。

まぁ理由は分かってるんです。ベストセラーをベストセラーの時に読むのって、ちょっと気がひけるじゃん?

ということで読みました。めっちゃ面白かったので、わたしのように「ベストセラー……」と悩んでいるひとはアマノジャクな心を捨ててとっとと手に取りましょう。

あらすじ

定年退職を控えた玄武書房辞書編集部の荒木は、自分が去った後に後継者として新しく制作される辞書「大渡海」の企画を任せられる人員を探していました。
辞書編集部の西岡に紹介されたのは、営業部で変わり者扱いをされている真締(まじめ)という男。言葉に対して並々ならぬ鋭い感覚を持つ真締を気に入った荒木は、辞書編集部へと彼をスカウトします。
「大渡海」の完成のために奔走する人々を描いています。

舟を編む/三浦しをん

小説とエッセイのギャップが魅力的でもある著者

 

三浦しをんさんは、「しをんのしおり」や「人生を激情」などのエッセイの方が馴染み深く、軽妙な語り口と、腐女子かつ読書好きな人間には共感いっぱいで楽しめる作品です。先にエッセイのほうで親しんでいたので、小説を読んだときはそのギャップに戸惑いました。小説家、三浦しをんしかご存じない方はぜひエッセイも読まれることをお勧めします。

エッセイを読んでいるとご本人もかなりの本好きで、生活空間をも浸食してしまうほどです。そんなところが主人公(?)とオーバーラップしたりもして、とても味わい深い作品でした。

辞書を作ることに情熱を持って取り組む人々

この本は、玄武書房の辞書編集部の面々それぞれの視点で物語が進みます。
荒木、真締、西岡、岸辺、そして最後にまた真締。
15年の歳月をかけて作られる「大渡海」を出版するために奔走する人々を描いています。「大渡海」という辞書を編纂を通して、辞書に対して並々ならぬ熱量をもった人々のプロフェッショナルな仕事ぶりに感嘆します。

作中で西岡が語る悩みは、もしかすると誰しも抱えるものなのではないでしょうか。
のめり込む真締と、真締に期待する人々。それをどこかで羨んでしまう西岡の複雑な気持ち。彼自身が真面目のように辞書を作ることに情熱を注がなかっただけではないか、とも言えてしまいますが、決してそうではないのです。
真締と西岡の違いは「適材適所」という言葉を思い出させます。
西岡に真締のような仕事はできないでしょうし、真締に西岡の真似は難しいのです。

さらに新人として岸辺がやってきます。
辞書になんてちっとも興味のない彼女からすれば、わからないことだらけで小難しいことばかりの新しい仕事は面白みを感じるのが難しいのもうなずけます。しかし、彼女が最終的に達した境地は、立派な辞書好きそのものでした。

西岡にしろ岸辺にしろ、真締とはまた違ったアプローチを持った人々です。
それが、「大渡海」を制作するのにとても重要な役割を持っているのです。

不器用な恋愛にやきもき

辞書編集とはまた違う魅力の一つに、真締の超不器用な恋愛があります。
学生の頃から下宿している早雲荘にはもう真締と大家のおばあちゃんしか住んでいません。どこか家族のような暮らしぶりになっている2人。そこにおばあちゃんの孫の香具矢が一緒に住むことになります。
板前見習いとして働く美しい香具矢に、真締はすっかり恋に落ちてしまいます。
恋愛経験値がゼロに等しい真締の右往左往する姿や、わかりやすい彼の恋心を知ってニヤニヤしてる編集部の面々のやり取りが面白い。

恋愛小説というのはあまり好きではないわたしですが、こういう変人の恋愛模様は楽しいですね。

映画はまだ観ていませんが、ぜひ観てみようと思わせる本でした。
キャスティングもぶれてない感じで、楽しみです!

辞書に興味がない人でも楽しめること請け合いです。
ちょっと1冊お気に入りを探そうか、なんて気分になったりして。

-小説,