つぶらいん

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小説

【小説】MAZE/行方不明者続出の遺跡。人間消失の謎は解けるのか?

2017/01/22

辺境の地にある不可思議な建物の謎を解くために安楽椅子探偵として呼ばれる、というかなり興味をそそるお話です。
冒頭で語られる建物内での人間消失の話なんかは、世界の不思議な話が好きな人にはゾクゾクするはずです。もちろん恩田陸ですから、ただの怪談話などでは終わるわけがない。一筋縄ではいかないストーリーが繰り広げられます。

恩田陸では珍しいシリーズキャラクターになる神原恵が初登場する作品でもあります。

あらすじ

ある辺境の地(アジアの西の方)にある直方体の形をした白い建造物。内部は細い一本道。その建物には中に入った人が消えてしまうという言い伝えがあります。
時枝満は高校時代の友人である神原恵弥から頼まれ、その地にやってきました。そこにいるのは恵弥のほかにアメリカ人のスコットと地元の人間のセリム。
よく事情を把握しないままやってきた満に、恵弥はその建物の「人間消失のルール」の謎を解明するように依頼します。

これまで300人近くを飲込んだと思われる遺跡の人間消失の謎とはいったい……?

MAZE/恩田陸

アジアのどっかの国にある遺跡の謎を解け! ワクワクするよね?

恩田陸の小説のすごいところは、なかなかに破天荒な設定をスルッと飲込ませるところです。上のあらすじを書いていて、自分でも「なんだそりゃ」と思ってしまいました。あらすじも、我ながらもうちょっとどうにかならんのかと。恩田陸の小説ってあらすじ説明が難しいんです。

ということで、シンプルにご紹介しました。
恵弥、スコット、セリムは別になにか仕事があるらしく、昼の間はやってくる兵隊さんたちとなんかしています。満はその詳細は知りません。怪しいこと極まりないんですが、そこはそれとして片隅に置いておくしかありません。満に依頼されているのはこれまでの証言を元にした資料で遺跡の謎を解く安楽椅子探偵なのです。

満視点で話が進むので、彼が知りえたことで推理していくしかありません。
こうして書くとミステリのようですが、この消失の謎はホラー的でもあります。消失に人が関わっているのであれば、それこそ殺人や誘拐という話でしょうが、超自然的にな何かだとするとホラーやSFの世界です。

読み手はこの物語が一体どちらなのかを考えつつ読み進めることになるのです。
ここら辺、作者が恩田陸というのが効いているんですよね。作品の振り幅が大きく、ジャンル判断が難しいので、油断していると想像しなかった方向に話が行くのが恩田陸作品です。

わたしは常々、小説は余計な推理をしないで、作者の思うままに右往左往するべき、と考えています。物語の濁流に身を任せて、登場人物たちと一緒に翻弄されるのが一番楽しいのです。

今作も、そんな感じで満がたどる遺跡の真実にハラハラしましょう。

神原恵弥シリーズ第1弾。

眉目秀麗頭脳明晰でありながら女言葉を使う恵弥の強烈なキャラクターにガッチリ掴まれます。
言動が完全におばちゃんなのですが、その表面に騙されてはいけません。イケメンなんだよ……。

シリーズと言っていいのか分かりませんが、彼が登場する作品は3作品あります。
まずこの「MAZE」、続いて「クレオパトラの夢」そして「ブラック・ベルベット」です。現段階ではこの「MAZE」だけが語り手が恵弥ではありません。なので、外部から見た恵弥がどういう人物かを知るのには一番わかりやすいです。
そしてその恵弥が語り手になるのが、後の2作品なのです。人となりにそこまでギャップはありませんが、この順番で読むと、恵弥に対する興味がぐんぐん湧いてくること間違いなしです。

「ブラック・ベルベット」には今回の主人公の満も登場しますし、「クレオパトラの夢」で出てくる人物もいるので、順番に読んだほうが人間関係も飲込みやすいかと思います。

「MAZE」を読んで恵弥に興味を持ったら他の作品も読んでみることをおすすめします。
「ブラック・ベルベット」では彼の今後に変化がありそうな示唆もあったので、この先が楽しみです。

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