つぶらいん

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小説

【小説】残穢(ざんえ)/実話なのか小説なのか不安になる作品。

2017/01/22

読者から送られてきた奇妙な体験談を発端にして、その土地にまつわる因縁をたどることになる主人公のノンフィクションテイストのお話。

読み終えたときに「実話では?」と思ってしまうリアリティと生々しさ。

思わず調べましたよね。
主人公の「わたし」のモデルは作者の小野不由美さんなことは明白ですし、実名で平山夢明さんと福澤徹三さんも登場することでよりそれが強まります。
映画だと役者さんが演じているので、フィクション感があるんですけど、小説だと逆にノンフィクション感が強くなるから不思議です。

この本だと、そのノンフィクション感も恐怖を増強する一つの要素になっていて、それにまんまとはまってしまいましたね。

語られる怪異の背景が、あっても不思議じゃないものだから、余計に生々しいのです。

あらすじ

小説家の「私」は本のあとがきで読者に怪談話を募集したことがありました。何年も前の小説ですでに絶版になっているものでしたが、古本で手に入れた読者からまだたまに送られてくることがあります。
ある時、久保(仮)というライターをしている女性から「自分の部屋に中いる気がする」という手紙をもらいます。
引っ越しをしたひとり暮らしの部屋の誰もいないはずの和室で、何かを擦るような音がするというのです。それが続いたある日、久保はその和室でさっと床を這う着物の帯のような物を目撃します。

久保からの話を聞いた主人公は既視感を覚えます。引っ越しを控えていた主人公は読者から送られた手紙を整理する中に、その原因を見つけます。久保が住むマンションと同じ建物の、別の部屋に住む女性からの手紙でした。そこには、幼い娘が天井から吊るされた「何か」が揺れるのを見て「ぶらんこ」と表していることと、その女性も床を掃くようなさっという音を聞く、という話が記されていました。

同じマンションの別の部屋で似たような怪現象が起きるのは一体なぜなのか……。

残穢/小野不由美

 

因果というものの不可解さ

この本では様々な怪異の断片が繋がり、一つの発端に集約していくわけですが、説明不能なものも数多くあります。

映画の呪怨のように、入ったものみな呪い殺す的な強力でわかりやすいものではありません。そこに問題なく住む人も入れば、久保さんの前に住んでいた人のように、完全に引っ張られてしまう人もいます。

でも結局その境目がわからないのです。久保さんと同じような体験をして、引っ越して行った別の人は、新居では何も起こっていません。
この違いって、一体なんなんでしょう。考えても答えが出るはずもなく、「たまたま」と片付けるしかないっていうのがまた嫌な怖さです。

映画と小説の恐怖の違い

映画は映画らしい演出が入ることと、見慣れた俳優さんたちが演じていることもあり、きっちりフィクションとして受け入れやすいんです。中盤の畳み掛けるように事実が出てくる演出はかなり怖かったですが、やはりそれも映画らしいと言えばそうです。

小説の方は事実を積み上げ、作中の人々も「これのせいだとはいいきれない」という考えをしっかり持っています。「全部呪いのせいだ!」とか叫び出す人もいません。出てきた事実を事実として受け止めて、「でもこれってもしかして……」という考えを持たせる。過剰な演出がないからこそのひやりとさせられるのです。

エンタメ的な恐怖ではない物をはらむ分、わたしはこちらのほうがたちが悪いと思います。読み手の余計な想像力を刺激するんですよね。賃貸住まいなので、やはり気持ちはよくないんですよ。

テーマがそもそも全人類に当てはまるようなことじゃないですか。
恨まれるようなことをしないで生きてきた人だって、土地に残った穢れに憑かれてしまう可能性はありますから。

鬼談百景も読もう!

この本の姉妹本のような位置にある「鬼談百景」も読んでみようと思ったんですが、いくつかの短編で挫折しました。怖すぎて無理でした。

作中の「私」が執筆していたのはこの本のことだと思われます。

実話怪談を集めたもので、フィクションなのかノンフィクションなのかは微妙なお話がぞろっと載っています。

わたしは実話怪談が苦手なので無理でしたが、そういうのも好きな方は合わせて読んでみるといいと思います。小野不由美が書くんだからそりゃもう怖いですよ。内容は教えていただかなくて結構です。怖いので。

映画「残穢~住んではいけない部屋~」の記事はこちら

ネタバレありとなしの記事があるのでご注意ください。

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