つぶらいん

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小説

【小説】眼球綺譚/綾辻テイストがぎっしり詰まったホラー短編集

2017/01/19

本格ミステリ作家の綾辻行人による、ホラー短編集です。

ガチホラーあり、怪談あり、ファンタジーあり……と幅広い展開をする短編集です。扱うテーマはバラバラなのにとっ散らかることもありません。どれも綾辻色を強く感じられるせいか不思議なほどまとまっています。

あらすじ

大学で助教授をしている宇条は、アルコール依存症の治療のため神経科へ通院していました。そこで大学の教え子を名乗る咲谷由伊から声をかけられます。彼女と付き合うようになった宇条ですが、結婚を申し込んだ彼に、由伊は自分の体にまつわる忌まわしい話を打ち明けます。(第1話 再生)

1話目からかなりかっ飛ばしてくれる素敵短編集。

眼球綺談/綾辻行人

本格ミステリ作家、綾辻行人のホラー小説集

この短編集は、どの作品にも「由伊」という女性が登場します。そこだけが共通点なのですが、その「由伊」も作品によってまったく違うキャラクターとして登場するのです。綾辻行人ファンにはおなじみの名前なのですが、ここから始まっているんですね。
ミステリ作家である綾辻行人さんですが、殺人鬼や囁きシリーズなどを読めば分かる通り、熱心なホラーファンでもあるのです。

それを前提にして読むと、本格ミステリ小説のなかにも、ホラー的な演出があることに気付くでしょう。

その綾辻行人がガチでホラーを書いた。それが「眼球綺談」です。

収録作品は7作品。

  • 再生
  • 呼子池の怪魚
  • 特別料理
  • バースデー・プレゼント
  • 鉄橋
  • 人形
  • 眼球奇談

個人的お気に入りは「特別料理」。
これはいわゆるゲテモノ食い嗜好の主人公が、妻とともにそれ専門のレストランへと通う話です。そこで提供される食材たちはちょっとここには書くのをはばかられるほどです。初級編で特殊な動物の部位や、普段食べない動物、さらには虫が出てきます。
その手の嗜好がない人ならば「おぇぇぇぇ」となるブツのオンパレード。こういう話の場合、嫌悪感の方が先にくるものですが読んでいると主人公の熱量に飲まれて、なんだか楽しくなってきます。

この作品集の中では少々異色な短編ですが、この作品が短編集の幅をぐんと広げる役割にもなっている気がしました。
児嶋都さんのコミカライズでもかなり面白く仕上がっているので、よろしければそちらも合わせてどうぞ。

それぞれの作品に登場する「由伊」たち

名前だけ共通の別人、と言ってしまえるほど、それぞれの彼女たちに共通点はありません。しかし、別人である、と言い切るのもなんだか違う気がしてしまうのが不思議なのです。
一見バラバラなそれぞれの短編をこの「由伊」の存在が一気にまとめあげている役割を果たしているのです。

1作読み進めるたびに「由伊」が登場するので、読者はだんだんと「次の由伊は……」と期待するようになります。

主人公を翻弄することもあれば、家族になったり、妻になったり、さらに主人公が由伊だったりもします。

下手だと「なんじゃこりゃ」となりそうな試みですが、そこは綾辻行人。独自に発表された短編のはずなのに、連作短編のような印象を持ってしまうから不思議です。

著者のほかの作品にも登場するので、読んでいる作品に「由伊」が出てくるとニヤリとしてしまうようになるでしょう。
わたしのイチオシ「深泥丘奇談」シリーズでも、看護士として登場します。

「もっと綾辻行人の怪奇小説が読みたい」そう思わせる短編集でした。

綾辻行人作品に関する記事はこちら

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