つぶらいん

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小説

【小説】羆嵐/三毛別羆事故をベースに、羆の恐ろしさを描く

2016/12/12

三毛別で起きた熊の襲撃事件をベースにした小説です。

フィクションの部分は極力抑えており、ノンフィクションを読んでいるようにも感じられます。淡々とありのままに描写する文章は、惨劇をリアルに伝えます。

実家が北海道の漫画家荒川弘さんの「百姓貴族」でも、北海道の熊事情について書かれています。
夜中に外に出たら後ろに動物の気配がして「クマだ!」と死を覚悟したというエピソードがありました。コミカルに描かれていますが、実際遭遇していたらと思うとゾッとしますよね。

三毛別の襲撃事件にもチラッとだけ触れられており、それで興味が湧いてネットで調べたんですが、ウィキペディアで読むだけでもかなり生々しいです。本を読んだ後に比べてみましたが、ほとんど実話レベルで書かれている小説でした。

あらすじ

明治時代、北海道の開拓地であった三毛別の支流、六線沢が流れる山間の村が舞台です。
そこに数組の家族が移り住み、村が形成されていました。しかし、ある年の冬の初め頃から備蓄用の食料が荒らされるようになります。そこには、大きな羆の足跡が残っていました。
その後、村の一軒の家が主人の不在時に襲われ、子供ひとりの遺体がみつかります。一緒にいたはずの母親の遺体はそこにはなく、羆が引きずって行った跡が残されていました。

羆嵐/吉村昭

開拓者である住民たちの苦労を思うと胸が痛む

彼らが六線沢に移り住んだ経緯や、村のおかれた状況から始まります。
貧しいながらも、新しい土地で必死に暮らす人々。羆からすれば、彼らの方が後からやってきた闖入者です。最初に蓄えを食べにきた時点では、被害にあった家の人々もそう思っていました。備蓄が減るのは困るものの、彼らの生活圏に入ったのは自分たちだと言う部分もあったようです。

しかし相手は羆。人間側の理屈は通じません。
数度で被害は収まったものの、冬の気配が濃厚になってきた頃についにその牙が人間にむけられることになります。

衝撃の事件は、あまりにも生々しく酷いものでした。
硬い文章で描写される惨劇の有り様は読む側にとても重いものを残します。

熊、こわい

この話は大正時代、開拓のために村落を作っていた時代の話です。しかし最近も熊のニュースは多く、今でも他人事ではありません。

普段生きていれば、熊に接することはありません。動物園などの施設で管理された熊を見たことはあっても、野生の熊がどのようなものなのかを実感することは少ないです。

調べてみたところ、ここで登場する羆は一般に認識されている熊の中でも巨大です。さらに、話の中で冬眠し損ねた羆は大変凶暴だとも語られており、人間にはどうすることもできない存在に感じられます。

ここまでひどい被害はそうあるものではないように感じますが、同じ著者の「熊撃ち」という本もあります。こちらは短編形式になっており、著者の取材に基づいたノンフィクションベースの小説です。タイトル通り、熊を撃つことを生業とする猟師たちの姿が描かれています。

大変重い本ですので、気軽には読めません

シャレにならない存在ですが、だからと言って根絶やしにするわけにはいきません。
生きる場所に線を引ければいいですが、動物にそれは通じません。一口に共存と言っても難しいことが沢山あるのだと思います。

気軽に読むことはあまり勧められるものではありません。
限りなくノンフィクションな話ですので、気持ちを強く持って読んでください。
興味があるのであれば、「熊撃ち」も合わせて読むと、マタギという生き方をより理解できると思います。

熊を題材にした映画って意外と少なくて、あまり見つかりません。

こちらは洋画ですが、キャンプに来た若いカップルが道に迷ったあげく熊に遭遇する話です。
熊が襲った人をどうするか、かなり生々しいものでした。ご参考までに。

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