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【映画】リサイクル -死界-/圧巻の世界描写。廃墟好き必見です。

2016/12/12

レンタル店で探すのに苦労する系映画です。販売商品も品切れみたいで、再販……難しいかな。例によってTSUTAYAでお取り寄せしてもらいました。

予告編を見てもらえばわかるんですが、もう世界観がすごい。小説家がよくわからないまま別世界に引き込まれてしまう話なんですが、そのわけのわかんない世界のわけのわからなさが美しい! ホラー系が苦手でも廃墟特有の美しさが好きな方は観ていただきたいですね。ホラー度としてはソフトな方なんで、苦手でもたぶん大丈夫です。

あらすじ

人気作家のディンインは、作品の映画化の記者会見で次回作の発表をします。まだ構想段階でストーリーすら決まっていませんが、タイトルは「リサイクル」。霊的な話を題材にする予定です。
記者会見の会場に、元恋人が訪ねてきますがディンインは拒絶します。

新作の執筆に取りかかってから、ディンインの周りでは奇妙なことが起き始めます。誰もいないはずの部屋で人の気配を感じたり、自分のものではない長い髪の毛を見つけたりするのです。その上、無言電話が頻繁にかかってくるようになります。

それを新作の題材にしようとキーを打つディンインでしたが、起きる出来事は、彼女が以前構想段階でボツにしたことばかりで……。

リサイクル -死界-

2006年 タイ・香港
監督:ダニー・パン、オキサイド・パン
出演:アンジェリカ・リー、ラウ・スーミン

※ネタバレ注意

忘れられたものたちがたどり着く場所

冒頭だけだと、オカルトものを題材に執筆を始めた作家が、怪現象に襲われる話かな、と思わされます。しかーし、いきなり話はガッと別方向に舵を切きります。

部屋で起きる怪現象に怯えつつも、それを貪欲に題材に取り込もうとする根性のある作家のディンイン。元恋人との話を終えて帰宅する途中の路地の奥に不思議な光を目撃し、吸い寄せられます。無事に帰り着いた彼女は、それも作品に昇華しようとします。途中まで書いたところで思い立って外に出るのですが、乗ったエレベーターは7階で停止して動きません。そのシーンはディンインがたった今途中まで書いて消したシーンです。

起きる怪現象は、ディンインが新作の構想で捨てたアイデアばかり。捨てたメモとの符号に妙なものを感じますが、どういうことなのかサッパリ分かりません。

下まで降りたディンインですが、マンションから出た先に広がっていたのは広大な廃墟の街。
その街の中には人の気配がしていますが、荒れ果て朽ちかけています。

混乱しつつも、街をさまようディンインの後ろにぼとぼと人が落ちてくる描写はいい。それが不自然な動きでムクリと起き上がるのもまたいい。こういう「生身の人間と違う」というのが強調されるシーンて大好きです。

この街の不気味さと、ここで登場する霊(?)が一番気色悪かったですね。
この先は薄気味悪くはありますが、ファンタジックな印象の方が強いです。怖さよりも不可思議な世界の表現のほうに気を取られます。

もう少しじっくりと展開するストーリーが観たかった

追ってくる亡霊のような者から逃れたディンインが次に入ったのは、廃墟の遊園地。
そこで、この世界について教えてくれる老人に出会います。彼はディンインに「ここにくるべきではない」と話し、元の世界に帰るように諭します。しかしディンインにしてみれば、来たくてここにいるわけではありませんし、そもそも帰りかたなんてわかりません。

老人にもっと話を聞こうとするディンインですが、その時間はありませんでした。世界が腐食しはじめるのです。老人いわく、この状態になったら逃げなくてはいけない、とのこと。またディンインは分からないままに別の世界へと飛び込みます。

次は森の中で大量の首つり死体らしきものがぶら下がっています。彼らは落下した人々のようにただの死体ではなく、ディンインにゆっくりと近づいてきます。そこにひとりの少女が助けに入ります。

この廃墟の世界に入り込むまでがけっこう長いです。入ってしまえば、こっちが追いつく前にポンポンストーリーが展開していってしまいまいます。
異様な世界の描写は凄まじくて、ぐっと心をつかまれるのですが、イマイチストーリーがハマりません。ひとつひとつの世界に要する時間が少なすぎて、えらいテンポよく進むゲームみたいです。もっとじっくり攻略してくれよーと思っちゃう。

色々と惜しいというのが正直なところです。

この世界と主人公、そしてあのエンディングは……?

遊園地で出会った老人から、この世界は忘れられたものや捨てられたものたちがたどり着く場所だということを教えられます。
周囲に広がる廃墟たち、ゴミ集積場に重なるおもちゃたち、誰にもお参りしてもらえないお墓、水子たちが育つ赤い洞窟……。

ディンインが遭遇した怪現象も、1度は捨ててこの世界ヘと送られたものでした。しかし、逆にディンインが取り込まれることになってしまいます。果たしてこれは一体どういうことなのか……?

すごく大きなくくりの入れ子構造になった映画です。
「自分の分身」とも言える主人公を設定し、彼女が遭遇する「リサイクル」の世界を描いた。
観る側は作家のディンインが書いた話を観ていることになります。

最初、このディンインは、作家のディンインが創作した主人公、それをボツにしたため、この世界へと入り込んだのだと思っていました。しかしそうすると作家ディンインが創ったラストシーンをなぞるのもおかしな話です。
襲いかかられる寸前でラストシーンを書き換えられ、光の中へと入って行くディンイン。作品の中のストーリーをなぞりラストシーンを迎えた彼女は、中継点にいたため作品から脱し現実へとやってきた、ということでしょうか。

ディンユーは一緒に行ったら「さまよう亡霊になる」と話していました。となると、ディンユーとディンインは立場が違うということになります。

ボツになった設定、というだけのディンインと、実際に堕胎されたディンユーとでは、あの世界に存在する質が違うということなのでしょうか。ディンユーの場合、あそこで生まれ成長しているわけで、存在感が差別化されているような?

あれが彼女の創作の中だったのは確かで、ディンインの行動はかかれた展開に基づいていて、ということはあの世界自体が創作? でもそれだとディンインが世界から出てきてしまったことがちょっと分からないぞ……? 世界はちゃんと存在している……?

分かるようでちょっと分からないぞ……とグルグルしてしまいます。

サイレントヒルが好きなら観よう!

映し出される世界は見事なものの、起きる現象とのCG合成が少々粗く、背景と演技に違和感を感じる場面もありました。まぁちょっと気になる、ぐらいなのでそこまでマイナスなポイントではありません。

恐怖を感じるかどうかは微妙なところです。ホラーというよりダークファンタジー的な色が強いと感じました。ただホラーが苦手な人が見たら怖いかもしれない……。慣れの問題?

世界の構築が甘かったら、ありがちなホラーになっちゃったでしょう。背景のすごさを感じる映画でした。
サイレントヒルは大分意識してるんじゃないのかなって気がするんで、好きな方はぜひ。

主演のアンジェリカ・リーは同じくパン兄弟が監督した「THE EYE」にも出演しています。印象的な美しさですよねー。

監督のパン兄弟は幽霊の描写はかなり良いです。盲目の少女が手術で視力を取り戻したことによって、おぞましいものを見るようになってしまう「the EYE」もかなり良いのでおすすめ。ストーリー的にはこちらの方がまとまっていて見やすいと思います。

「リサイクル-死界-」のほうはAmazonではもう在庫がないようですね。廃盤なのかなー。レンタル店ではたまに見かけますので、興味のある方は探してみてください。

このまま埋もれてしまうのはちょっと惜しい映画。

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