つぶらいん

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小説

【小説】スクランブル/迷宮入りした学校内での殺人事件。15年後、友人の結婚式場でその真相が明らかになる。

2016/12/12

大人になった後にこそ刺さる青春ミステリー。

ちょっと特殊な高校生活を送る登場人物たちが、学校で起きた殺人についてあーだこーだと推理をするお話。章ごとに主人公が変わり、それぞれの立場から事件に触れていきます。

文芸部に所属し無類の本好きたちが主役の物語は、本好きにはぐっとくる小ネタもたっぷり。
読んでいるとつい昔を思い出してしまうはずです。

あらすじ

15年前、高校時代に学校内でひとりの少女が殺害されました。
当時文芸部に所属していた部員たちは友人の結婚式で、それぞれに事件を思い返します。

彼女たちが通っていたのは名門女子校。高校からの編入組はアウターと呼ばれ、どこか線を引かれていました。夏見は学園での生活に息苦しさを感じていましたが、受験し直すほど熱心ではありませんでした。

夏見も参加していたアウターたちが集められた補習授業の最中、ひとりの生徒が飛び込んできて、シャワールームで人が死んでいると告げます。

スクランブル/若竹七海

少数派の異物として入学してしまった学校は居心地の良い場所ではなかった

舞台は名門私立女子高。高等部編入組は「アウター」と呼ばれています。こういった呼称は異物を思わせます。
その通りで彼女たちはどこかこの学園に居場所がないように感じさせます。
いじめや仲間はずれというよりは「異物」扱いといった方がいいでしょう。

その学校の文芸部のメンバーたちが章ごとに順番に主人公として語り手になります。一瞬連作短編集かと思うのですが、この小説は夏に起きた学園内の殺人事件を題材にしており、それを巡る長編小説です。

文芸部のメンバーは、アウターの夏見、マナミ、洋子、宇佐、持ち上がり組の飛鳥と沢渡の6人です。

共通点は全員が無類の読書好きだということ。
文芸部は本好きが集まってダラダラするのを目的に創設されていて、部活と言ってもみんな必要な時だけ必要な活動をしているだけ。基本は読書とおしゃべりです。

学園に染まれない文芸部員たち

学校という空間は大なり小なり、ある程度決まった空気があるものです。
校風というほどのものではないですが、そこに流れる全体の空気感に馴染めるかどうかで、学校の生活は大分変わってきます。

ここに登場するアウターたちは、学校の方針やありように少々寒いものを感じているのが共通点です。シニカルな視点で大人たちを眺め、従順に見える他の生徒たちのものさしに対しても疑問を持っています。

それに声高に異を唱えても無駄なことだというのは彼女たちも痛感しており、よほど自分たちに(友人も含む)害がないことはあくまでもやり過ごす方針が伺えます。
誰だって面倒ごとを起こしたくはないものですし。

場に染まるというのは薄気味悪いものだな、と思わせるシーンがいくつかあり、学園が異常というよりも、10代の少女たちが空気に染まるのは容易いことなのだなと思わされます。
そこに馴染めなかったものたちがアウターなのです。

大人になってしまったからこそ、刺さる小説

学生時代を思い出すとき、楽しさと息苦しさが入り交じった微妙な気持ちになります。ただただ楽しかった! と言える人は羨ましい限りです。

女子校という場所は男の目がない分、女の色んな面が出てきますし、集団的に厄介にもなります。

30代になった彼女たちが「あの頃」を振り返るシーンは、誰しも感じたことのある部分が含まれているのではないでしょうか。
強制的に関係が続いてしまう学校という空間で、みんな窮屈に感じながらも、自分を保つために必死にあがいています。
校風に馴染めない、というなかなか致命的なものを抱えた文芸部員たちは、それぞれに思うものがあります。あの空気に馴染めることが不幸なのか、幸せなのかはよく分かりません。少なくとも平和であったかもしれないですが、それが楽しいかというと疑問です。

スクールカーストという言葉もすっかり根付いていて、そんな言葉がなかった自分の学生時代も、確実にそれが存在していました。「学校の形」を楽しめなかった思い出がある人には、苦いものを思い出す作品になるでしょう。

見事な青春ミステリ

ひとりの少女が学園ないで殺害されたこと事件を題材にしおり、それを巡って文芸部員の面々が独自に推理を組み立てていきます。どこか独りよがりで見当違いなそれは、自分が持てる情報をフルに活用して考えられたもので、殺人とは似つかわしくない微笑ましさを感じます。

そして、15年後結婚式場で事件を振り返る彼女たちの姿に学生時代にはなかった強さを感じてなんだかホッとするのです。

学生時代を終えた後にこそ響く小説です。
わたしはこれを20代で読みましたが、何より本の話ができる友達がいることが羨ましかったです。

 

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