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小説

【小説】家に棲むもの/小林泰三のホラー短編集。夫の実家に移り住んだ妻が遭遇したものとは?!

2016/12/11

かなりバラエティに富んだ短編集です。
「ホラー」というくくりの中で様々な可能性を掘ったような作品集で、おぞましいものもあれば笑えてしまうものもあったりして、作品を読むごとに小林泰三という作家のイメージが変わっていくはず。

あらすじ

夫の実家へと家族で移り住んだ文子。
古くどこか異様な建築のその家は空気が淀んでおり、彼女は好きになれません。夫と娘、姑と4人暮らしをしているのですが、その家の中では他の何者かの気配がするのです。
不安が募る日々でしたが、そこへ夫の単身赴任が決まってしまいます。本当は家を出てついて行きたかったのに、姑が引っ越しを嫌がったためしかたなく単身赴任をすることになったのです。

家の中の気配は消えず、天井からは妙なきしみが聞こえてきます。耐えられなくなった、文子はこの家について周囲の住民に聞いてみるのですが……。(表題作:家に棲むもの)

家に棲むもの/小林泰三

小林泰三のホラー短編集

収録作品は以下の通りです

  • 家に棲むもの
  • 食性
  • 五人目の告白
  • 森の中の少女
  • 魔女の家
  • お祖父ちゃんの絵

わたしのお気に入りはなんと言っても「肉」。
小林泰三さんの小説はときどき関西弁のキャラクターたちが出てくる場合があります。

「肉」は友人同士の星絵と郁美がファミレスで食事をしながら会話をしているところから始まります。
星絵は大学で遺伝子工学を学んでおり、現在は助手。星絵は郁美にそこの助教授について愚痴をこぼします。

口調の軽さとグロテスクな表現が相まって、なんともいえないおかしさがかもしだされるのです。描かれていることはおぞましいのに、笑えてしまって、すごく好きです。

この短編集で最高潮のおぞましさを持つのはやはり最後に収録されている「お祖父ちゃんの絵」です。
ハートフルなイメージがわくタイトルとは裏腹に、そこで繰り広げられる「純愛」に吐き気がしてきます(褒めてる)。これを最後に持ってくるあたり、なかなか凶悪でいいと思います。この作品がこの本の読後感を左右しているのは確実。
ここまで受け入れがたい作品はなかなかないのではないでしょうか。

「食性」の主人公は極端から極端へと走る意思の薄い男です。彼に熱弁を振るう女性2人の強烈さに目眩がしますが、彼の主体性のなさにも腹が立ってきます。
彼女たちは彼がどうであろうと己の信念を曲げることはありません。到底関わりたいとはまったく思わないタイプの女性たちですが、主人公の男の方がふらふらしていてみっともないと思えてくるから不思議です。

ズレた世界にハマる!

小林泰三さんの短編小説を読んでいるといつも真顔でぼこぼこに殴られている気分になります。登場する人物たちがどこかズレていて、そのズレが作品をとんでもない結末へと向かわせるのです。そのズレている登場人物たちは、自分たちのズレなんてまったく気にしていません。おかげで読んでいる人間がものすごい不意打ちを食らうことになるのです。

小説でありながら、グロテスクなビジュアルがありありと浮かぶ作品が多く、文章から喚起される自分の想像に嫌になってしまうことでしょう。
そしてそれが癖になるのは間違いありません。

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