つぶらいん

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小説

【小説】臓物大展覧会/ジャンルを超えた短編集。予測のつかないストーリー展開に今回も翻弄される。

小林泰三の短編集です。角川ホラー文庫のカバーイラストが素敵。電子版だと白に文字表紙で悲しい……。
9本の短編がおさめられています。


臓物大展覧会/小林泰三

透明女
ホロ
少女、あるいは自動人形
攫われて
釣り人
SRP
十番星
造られしもの
悪魔の不在証明

9本収録されていますが、これを挟む形でプロローグとエピローグがあります。それがタイトルの「臓物大展覧会」です。

強烈な「透明女」

「透明女」は一番長く100ページ近くあります。
相変わらず著者らしいズレた会話が繰り広げられる作品で、おぞましい惨状とのギャップが面白いです。
主人公の元を訪れる刑事たちのズレ漫才みたいなやりとりに加え、主人公と友人たちの電話の緊張感のなさ。そこに気を取られていると突如呈示されるグロ。
読み手の感情を一方向へむかわせてくれないくせ者な1編。

これを読んでしみじみと、人間て会話じゃあ分かり合えないもんだなぁと思ってしまいました。主人公と友人や刑事との会話は読んでいると話が飛んだりズレたりしているのが分かるんですが、実際自分達の普段の会話を思い出してみると似たような印象なんですよね。
特に女性同士のとりとめのない会話……。

「釣り人」「悪魔の不在証明」がいい

「釣り人」はショートショート並みの短編です。読んでいればすぐに途中の違和感に気付きます。もちろん作中の人々も気がつくんですが、その真相がまたいい。
そこで行われていることはストレートな話ですが、ちょっとしたひねりが利かせてあり、ニヤリとさせてくれます。

「悪魔の不在証明」は田舎町に突如表れた宣教師に対し、敵愾心を抱く男が神について議論することになってしまう話です。
信仰心を持つ男と、男のことが気に入らないだけの主人公、という図式。主人公は頭はいいものの、自分の感情を建前や理論で固めているのでとても好感度が低いです。そして村人たちも普通にそれを感じ取っているのが笑えます。

しかしこの話の本題はそこではありません。2人の議論の決着からの怒濤の展開と、最後のページにこの話の恐ろしさが潜んでいるのです。

作品の幅広さが嬉しくなる

タイトルから大分グロい話を思い浮かべますが、作品のテイストは幅広いです。著者の短編集を読んだことがあるひとならば納得ですが、単純にタイトルに惹かれて手にとったら違和感を感じるかもしれません。

グロ、ホラー、SFなど今回も著者らしい作品がずらりと並んでおり、読み進めるまで一体どのテイストの話なんだ、とこちらもまったく分からないのが楽しいところです。

小林泰三さんの作品を読むと、ジャンル分けというものの不毛さを感じます。SFは未知のものへの恐怖だったり、あまりにもハイテクになってしまったがゆえの怖さがあったりします。さらに小林泰三作品だとそこにコメディ要素も盛り込まれ、おぞましいけれど笑えるという、読み手としてなかなか不可思議な状況に置かれます。

様々な要素をひっくるめてホラー文庫に収録されているのが面白いんですよね。

小林泰三作品の記事はこちら

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