つぶらいん

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小説

【小説】赤い月、廃駅の上に/本格ミステリ作家・有栖川有栖が描く怪談小説

本格ミステリーで有名な筆者による現代の怪談小説です。
すべて鉄道くくりになっている本作は、幻想的なものからゾッとするものまでバラエティに富んでいます。日常の延長にある物悲しい話もあれば、突飛なファンタジーみたいな設定のものまで様々。
鉄道というくくりがあるせいか、バラバラなテイストの作品が不思議とまとまっています。

ただ怖いだけじゃない、いろんなテイストを味わいたい、という欲張りな方におすすめです。

収録作品

赤い月、廃駅の夜に/有栖川有栖

  • 夢の国行き列車
  • 密林の奥へ
  • テツの百物語
  • 貴婦人にハンカチを
  • 黒い車掌
  • 海原にて
  • シグナルの宵
  • 最果ての鉄橋
  • 赤い月、廃駅の上に
  • 途中下車

「夢の国行き列車」で始まり「途中下車」で終わるっているのがこの本の印象を決めている気がします。
作品のラインナップとしては、だいぶ突飛なものやホラー色が強めなものまでかなり多様なんですが、物悲しい終わりを迎える静かな着地の物語で挟まれていることで、本自体の印象がそんな感じです。

読み終えたあとも後をひくような恐怖感を残すわけではありません。本を閉じた後にはぐっすり眠ることができるタイプの小説です
作者の配慮かなーと初出を見てみたら、ふつーに発表順でした。思いっきり考えすぎでした。

うーん、それはそれですごいぞ。

表題作はイチオシ!

タイトルにもなっている「赤い月、廃駅の上に」が最後にきていたらと思うと、印象がガラッと変わっていたでしょうからね。

しはやっぱり表題作の「赤い月、廃駅の上に」ですね。
自転車一人旅をしているティーンエイジャーが遭遇する廃駅での恐怖の一夜を描いています。この中でこれが一番好きってあたりがわたしの好みをよく表しています。好きなんだよ……。

この話のポイントは、彼がひとりでアレに遭遇したんじゃないっていうところですね。たまたま行き会った人と一晩駅で過ごすことになったことで、連れがいる安心感があったところで、そんなものを吹っ飛ばすものの登場。この緩急がいい。

「密林の奥へ」もいい。まさかの異国での鉄道怪談です。
そもそもとして、言葉もまともに通じない異国を旅して歩くこと自体がわたしから見れば恐怖なんですけど、それを逆手に取っているかのようなストーリーです。
密林の中を走る列車のイメージが戦列に浮かぶ小説です。

列車くくりの中で異彩を放ちつつ、しっかりそこへと着地する「海原にて」も好きです。
海と怪談は非常に相性がいいですよね。船の上で怪談話を聞く、なんて経験してみたいです。シチュエーションもばっちりで最高じゃないですか。

ゴリッゴリのホラーは苦手だけど、幻想的な話は好き、という人におすすめです。

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