つぶらいん

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小説

【小説】蠱/加門七海が描く連作怪談短編集!ホラー好きなら読んで損なし!

加門七海が描く現代の怪談短編集。

加門七海の作品の魅力はやはり本人の実体験が含まれているというリアリティのある恐怖描写です。

収録作品&あらすじ

大学生の涼子は恋人に別の女がいる事を知ってしまいます。
彼を悪い女から守るためになんとかしなければ、と考えていたとき、大学の講義で蠱毒の話を聞きます。
その話を聞いて、彼女は幼い頃飼っていた蟷螂たちが偶然その蠱毒の様相を呈していた事を思い出し……。(表題作/蠱)

蠱/加門七海

収録作品

  • 浄眼
  • 桃源郷
  • 実話
  • 分身

民族学的なテーマと現代的な登場人物たち

この作品は御前教授という民俗学者が全てに登場します。主人公ではなく、怪異に直面する主人公たちに時に助言し、時に不安を吹き込むという立ち位置。どこか酷薄な印象を受けますが、一応相談すればきちんとしたアドバイスをくれたりもします。しかし全てに共通するのは、全くいい結末にならないところ。この後味の悪さが癖になる小説なのです。

蠱毒や弥勒信仰、即身仏など民俗学的なモチーフが出てくる作品もあれば、教室で話していた他愛もない怪談話が主人公に襲いかかるというベタなシチュエーションもあります。

そのどれもが、もしかしたらちょっとありえるんじゃないかと感じられるからこそゾワッとするんですよね。
「民俗学」というと、普通に生活しているわたしたちにとってはあまり馴染みがありません。しかし最終話のように自分とは関係なくとも身内がそれに親しんでいる可能性だってあるのです。

基本的にバットエンドが多く、登場人物たちが幸せな結末をむかえることはほとんどありません。ハッピーエンドのような終わりでも、それはご本人たちだけ、というものも。

説明がつく話ならまだいいのですが、「実話」のようにほとんど説明の付かない話だと後味の悪さは一気に上がります。

シリーズ通して登場する民俗学者の御前教授

面白いのは、御前教授の立ち位置です。先に書いたように解決する立場ではありません。ミステリなんかだと探偵役になりそうなキャラクターなんですけどね。

ホラーにおける大事な点に「安心できなさ」があります。
ミステリーのように解決を前提としている場合、探偵役がいれば大丈夫、と思ってしまいます。まぁそういう形式の話ですから当然です。ミステリの場合はそこが面白いポイントなのですから。

しかしホラーの場合「この人が出てきたら大丈夫」と思っちゃうと、怖さが半減してしまいます。綺麗に解決を望むのならともかく、ホラーですからやっぱり期待するのは絶望的な恐怖感だったり、後味の悪い結末だったりするのです。解決しないからこそ余韻が残るんですよね。

この御前教授の「安心できなさ」はなかなかのもので、余計なこと言ってるなーという場面も多々あります。多分本人に他意はないんですが、彼の一言が状況を悪化させる場合もあります。

狂言回し的立ち位置なのが面白くて、シリーズ化しないかなーと内心思っていたんですが、続編が出る気配もありませんね。残念。

面白いホラー小説教えて、と言われたら勧めたい!

民俗学に関する話もウンチクというほどでもないのでわかりやすいです。そういう方面に興味のある方は読んでみるとなにかのとっかかりになるかもしれませんよ。

変に幻想的な話にいかないところも好きなポイントです。地に足の着いた現代的な舞台設定に主人公はイマドキの若者。そこにぶち込まれる民俗学的ホラー、という部分がいい! 違和感を感じそうな組み合わせですが、不思議に融合しています。

面白いホラー小説教えて、と言われたらオススメしたい作品です。
読み終えた後、なんとも言えない後を引く小説たちです。

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