丘の上に建つ洋館をテーマにした連作短編集。
古い一軒家を改築し住む女性作家
念願の一軒家を手に入れた老姉妹
家を案内に来た不動産屋
家の主人に仕える女と攫われた子ども
家を修理する大工たち
などなど、家に関わる様々な短編集です。
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怪談雑誌「幽」に連載されていた本作
その昔、わたしも買って読んでいました。季刊誌なので、10号ぐらいまで買ってそれ以降は買いそびれてそのままになっちゃいました。
そこで2作目か3作目ぐらいまで読んだんだったか……。
私の家では何も起こらない
恩田陸
強烈ですよね。双子の老婆の話なんかはガチすぎてすげぇわっていう。情景まで浮かんできます。
お気に入りは家を修理する大工さんの話です。これだけ話のテイストが違ってるんですが、それがまたいい味になっています。
おなじ一軒家を舞台にしつつも、時代設定がそれぞれ違い、もちろん登場人物も違います。様々な出来事がこの「家」で起こり、それらが積み重なっていきます。
この家を忌まわしい場所にしているのは、この家なのか、それとも過去なのか……?
幽霊屋敷というと、ド派手な化け物屋敷を思い浮かべてしまうのは洋画の見過ぎなんでしょうね。
この家を幽霊屋敷たらしめているのは、過去に起こった様々な出来事だけど、なぜそれはこの屋敷で起こったのだろうか……なんて考え始めると何回も読み返してしまいます。
実は著者のガチホラーは珍しい
恩田陸はジャンル分け不能の作家です。
ミステリだったりSFだったりファンタジーだったり? という感じで正体不明な作品が多いです。
というのも、ストーリー自体はミステリだけど展開はちょっとズレるか? みたいなことが多くて、恩田陸の本を読むと、世の中一般のジャンル分けというものが無意味だと思えてくるから不思議。
普通は、本格ミステリかと思って読んでたらいきなりのホラー展開、とか腹立つんですが、恩田陸に限ってそういうことは一切ありません。思い切った舵の切り方をするんですが、あまりにも面白くて気になんないんですよね。
なので恩田陸の小説はわたしの中ではジャンルが「恩田陸」なんです。この人の本は一筋縄ではいかないのですよ。
さて、そんな著者の作品の中で珍しくジャンルがはっきりしているのが本作です。