田辺剛のラヴクラフトコミカライズ第3弾!
これまでも卓越した描写力でラヴクラフトの世界をコミカライズしてきた田辺剛。
迷わず買って損なしです。今回もすごかった……!
収録は2作品。「ダゴン」と「闇に這う者」です。
どちらも原作を知っていても知らなくても楽しめる仕上がりです。
田辺剛氏の漫画はラヴクラフトの入門としても最適です。ラヴクラフト興味はあるけど、小説は苦手……という方はぜひ!
実はわたしはこの「闇を這う者」は原作を読みこぼしていたようです(読んでから覚えがないことに気づいた)。ほら、原作知らなくても楽しめるでしょ?
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「ダゴン」について
海を漂流していた男。たどり着いた孤島で目撃した異形の者とは……?
闇に這う者/田辺剛
野暮になるので余計な説明は抜きにします。
異形の神とそれを崇拝するこれまた異形の者。ラヴクラフトのこのSFのようなホラーのような作品て本当にいい。
そしてこの表現しがたい異形の者の描写が卓越しています。なんともいえない嫌悪感を感じる造形。そしてその目に宿る知性が絵から伝わってきます。
結末に至るまでの男の孤独感と恐怖が画面から滲み出てきます。
「闇を這う者」について
「わたしの創作活動の場にふさわしい」とフェラデル・ヒルに引っ越してきた主人公。町にある黒い教会に興味を惹かれます。外側から施錠されたその教会には忌まわしい過去がありました。
警官の忠告も聞かず、中に侵入する主人公を見て、町の人々は怯え、家に閉じこもってしまいます。不可解に思いながらも主人公は教会内を探索するのですが……。
野心にあふれる怪奇作家がその好奇心ゆえに、踏み込んでは行けない場所へと足を踏み入れてしまうお話。
人々の忠告をスルッと無視して教会内に侵入しちゃう主人公。言うこと聞けよ。なんだかいけ好かない主人公です。ただ冒頭から読み返すと、彼自身の性格の問題というよりも、この教会(中にいる何か)にすでに魅入られていたとも言えるかもしれません。
教会に侵入するものの、異変を感じ逃げるように自宅へと帰ります。意外と撤収早い。教会の尖塔にあった新聞記者の遺体にのこされた手帳と、ネクロノミコンにあった暗号を解読し、自分がなにを目覚めさせてしまったのかを悟る主人公ですが、時すでに遅し。
主人公が教会に侵入してから町では奇妙な出来事が頻発するようになってしまいます。闇を好み、光を恐れる「それ」は町が停電した夜、その姿をついに現すのでした。
後半の畳み掛けるような描写がすごい!
彼自身と教会の尖塔に潜む「それ」の五感がリンクしていく場面はすさまじい。冒頭で彼の末路を知りながらも、その過程はこちらの想像を遥かに超えて行きます。
作中で主人公は自分は発狂しようとしている、と表現していますが、どちらかと言うと教会に潜む者に触れたことで、覚醒したような印象です。
彼の肉体は死んでしまいましたが、その精神はあの生き物(?)とともに生きているのではないかと思えるエンディングでした。
「狂気の山脈にて」を読みたい!
前にも書きましたが、とにかく「狂気の山脈にて」をぜひコミカライズしていただきたいんですよ! 忘れもしない、わたしはヘアサロンで縮毛矯正の真っ最中でした。4時間かかるので毎回本を持ち込むのですが、そのとき読んだのが「狂気の山脈にて」です。
髪の毛をあっちに引っ張られ、こっちに引っ張られしつつ夢中で読みふけったのも数年前。あの興奮は今も忘れられません。
ギレルモ・デル・トロ監督の映画化とともに切望するのであります……。
追記
なんとこの後に「狂気の山脈にて」がコミカライズされました!
4巻というボリュームが嬉しい! 白の装丁が毎回かっこよくてポスター作って欲しいわー。