新しい趣味に開眼しそうになる不思議な漫画です。こういうお店に縁のないわたしですが、すごくこう、ぐっときました。
初老の紳士で構成されるリストランテでの人間模様を描いた漫画です。
主人公のニコレッタを中心に、母であるオルガとの関係性の修復や、ちょっときになるクラウディオとの関係の進展などが軸になり、物語が展開されます。
スポンサーリンク
あらすじ
祖父母のもとに預けられっぱなしだったのに業を煮やして母、オルガをたずねてローマにやってきたニコレッタ。
母の再婚相手がオーナーのリストランテを訪ねます。オルガの再婚相手であるオーナーのロレンツォがバツイチ子持ちを嫌がっている、ということらしく、結婚のために子どもがいることを隠しているのです。
ニコレッタは成人するまで放って置かれたことに腹を立て、本当はオーナーに娘がいることをばらしにやってきたのでした。が、うまくオルガに丸め込まれて友達の娘ということに。
ロレンツォが経営するリストランテ「カゼッタ・デッロルソ」は、初老の紳士が給仕してくれる落ち着いた空間です。これは老眼鏡の紳士が好きだというオルガのために、ロレンツォが採用の条件に入れているのです。
最初は呆れたニコレッタですが、カメリエーレ長のクラウディオに自分もだんだんと惹かれるようになります。
リストランテ・パラディーゾ/オノナツメ
老眼鏡の初老の紳士……これはいい。
登場人物たちの年齢層が高くて、若いのはニコレッタ(20代)ぐらい。そりゃそうだ、なにしろ主要人物みんな老眼鏡だもん。
ニコレッタに接する彼らの紳士的な振る舞いや、時に娘や孫に接するような温かさは年長者の余裕とも言えるでしょう。それぞれのキャラクターにもドラマがありそうで、読んでいるうちに彼らにもどんどん興味が湧いてきます。
読み終わる頃には、この店に通う女性たちの気持ちはすごく分かるぞ、となるはず。
ローマが舞台なのもいいんですよね。彼らのキャラクターは日本人じゃ成立しない。こればっかりはお国柄。年齢を重ねてもなお自分の人生を楽しむ人たちはとても魅力的です。
カメリエーレのクラウディオへの恋
オルガの趣味と聞いてマジかっていう反応だったニコレッタですが、リストランテに通ううちに、クラウディオに惹かれるようになります。年齢差などもあり、自分でも信じられない部分も感じつつ、優しいクラウディオに何かを癒されていくニコレッタ。
リストランテに来店するお客様は、老眼鏡の紳士たちに惹かれて通う女性が多いとのこと。料理が絶品なこともあり、予約でいっぱいなのです。
漫画を読んでいるうちに、わたしもこのリストランテに通う人の気持ちわかるわーと一気に共感。
落ち着いた所作、柔らかい物腰、年齢を重ねたからこその余裕のある態度。リストランテを作る空気の心地よさは納得です。
母娘の関係の修復
ストーリーだけ説明すると、オルガがずいぶんひどい母親のようですが、読んでいるとニコレッタを大事に思いつつも、自分の人生もないがしろにはできない、という強さを感じるんですよね。祖父母のもとで育つ寂しさはあったでしょうが、逆に預けられる相手がいたからこそ、好きな相手との再婚に突っ走ることができたのかもしれないなと。
ニコレッタも、オルガとの時間が増えたことで、彼女のことを理解し、なんだかほだされてしまいます。
それもわかるんですよね。実際のところ、再婚のために娘がいることを隠すことにはなりましたが、祖父母宅に預けられっぱなしだったのは弁護士という仕事が忙しいせいもあったのです。
近くに来たことで、オルガのほうもニコレッタを構いたくてしょがないように見えました。
一見、クラウディオへの恋がメインのようなんですが、こちらの母娘の関係の変化の方が主題なのかな。
続編「GENTE 〜リストランテの人々〜」もおすすめ
こちらは、カゼッタ・デッロルソにニコレッタが来る前の話から始まり、その後まで描かれます。
2巻と3巻の間に「リストランテ・パラディーゾ」が挟まる時系列です。
タイトル通り、リストランテで働く人々それぞれに焦点を当てていて、彼らの過去やリストランテが開かれる経緯などがわかります。
このシリーズは全部読むのをおすすめしたいので、「リストランテ・パラディーゾ」が気に入られたらぜひ読んでみてくださいね。3巻で完結しています。
わたしはテオがお気に入りなのだ……。前のシェフのヴァンナとの関係とか超いい……。