作家、乙一がHPで公開していた日記的な創作が1冊の本になりました、ということらしいです。
「ということらしい」というのは、そもそもとしてこの本の内容が創作、事実、嘘、冗談、真面目な話が入り乱れ、どこまで本当なのかがサッパリ分からないからです。
おそらくは観た映画とゲーム、買ったものなんかは多分本当でしょう。しかしそれ以外に関しては保証がありません。ゲームや映画のことだってわたしの勝手な判断で本当と思っていますが、全部嘘かもしれません。わかりません。
そんな1冊です。
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不思議な魅力を放つ本作
最初の方は割と普通の日記風です。時折妄想が広がり、長文になることもありますが、おおむね淡々と日々のことが書かれています。
小生物語
著者:乙一
しかしだんだん飽きてきたのか、作家という職業病がでてきたのか、どんどん創作妄想が広がっていくのです。
現実と妄想の境目があいまいになり、読む側を翻弄するのはさすがです。
しかし、乙一さんの作品のなかでこの本を手に取ろうとするぐらいマイナーな嗜好の持ち主になれば、ニヤニヤと読み進められること請け合いです。
乙一さんの小説のあとがきが好きな人は、かなりの確率で好きな本です。
わたしは基本的に人の日記的なものを読むのが好き(ブログとかです。盗み読みじゃないよ)なので、こういう本は大歓迎でした。
この本で初めて乙一を知りました、なんて人がいるのかは分かりませんが、しょっぱなでこれを引き当てるのもなかなかだと思います。
乙一さんの小説はどれも面白いのでおすすめなのですが、この本のイメージで読むと驚くかもしれません。小説本編には当然ながらこのノリはありません。あったとしてもあとがきです。
一通り乙一作品を読み終えてから読むと、大変味わい深いので、1、2作小説を読んでみる方をおすすめします。
よくあるエッセイや日記をまとめたものとはまったく方向性が違います。
日常と非日常の入り交じった妄想を読んでいるのです。ショートショートを読むようなイメージのほうがしっくりきます。
全体的な感想としては、単純に「毎日楽しそうだね」というところ。いつの間にかにこにこして読んでしまう不思議な本です。
この日記が今も続いていたらぜひ読みたいところですが、本になった時にはすでに終了していたようで、残念です。リアルタイムで読んでいた人は楽しかったでしょうね。羨ましい!