うずまきが襲ってくるってなんだよ、と思ったあなた。読みましょう。
伊藤潤二の長編漫画の特徴は、過剰とも言えるエスカレートっぷりです。
そもそもスタート地点でさえ、凡人には追いつかない発想なのに、それが話が進むごとにどんどん広がり、予測もつかない展開を見せてくれます。
「うずまき」は短編が多い伊藤潤二作品には珍しく3巻に及ぶ長編です。1話ごとに話は完結していますが、1話進むごとにこの町のうずまきの禍々しさが増していきます。
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あらすじ
黒渦町に住む高校生の五島桐絵は、別の高校に通う恋人の秀一を駅まで迎えにいく途中、彼の父親を見かけます。声をかけるのですが、じっとかたつむりの殻を眺めたまま動きません。
合流した秀一にそのことを話すと、彼の口から父親の異様なうずまきに対する執着を教えられます。そして、それはこの町の影響だと話すのです。冗談として受け取っていた桐絵だったのですが、彼の家で父親の奇行をまのあたりにし……。
うずまき/伊藤潤二
始まりは主人公の彼氏の父親
他に類を見ないうずまきコレクターの彼の行動はあまりにも異様です。あらゆるうずまきを収集するだけでは満足せず、彼は自分自身でうずまきを体現することになります。
彼のたどる末路は凄まじく、ここから始まるうずまきによる惨劇の序章としてはあまりにも強烈です。
怪異に巻き込まれる桐絵と秀一
黒渦町を舞台に起きる事件に、桐絵と秀一は何度も巻き込まれます。
常軌を逸した人々の中で、彼らはギリギリで理性を保っているように見えます。うずまきにより家族を失う秀一は人一倍うずまきに対し敏感です。
どんどんやつれ、青ざめていく秀一。3巻まで読み通して1巻に戻ると、秀一がまだ普通で驚くでしょう。
しかしそんな秀一が何度も桐絵のピンチを助けてくれるのです。うずまきに対する耐性がすごい。
1、2巻で積み重ねた伏線たちが一気に芽吹く3巻
1、2巻は短編形式で進みますが、3巻はこれまでの集大成です。
うずまきにより町が崩壊していく様が描かれ、一体物語はどこに着地するのか予測がつかなくなります。
うずまきにより人々の理性も崩壊していく様はおぞましく、理性を保つ桐絵たちの方が少数派になっていく世界は異様です。
1巻の時点でこんな世界を誰が予想したでしょうか。
わたしの中では伊藤潤二作品No.1です。
この漫画を読むと、世の中にあるうずまきに過剰に反応するようになります。ちょっとしたものにも「あ、渦巻いてる……」と釘付けになったり写真を撮ったりするようになるでしょう。
そんな危険な感染性をもつ漫画が「うずまき」なのです。
コミックスは3巻で完結。
Kindleだとバラのほうしかないですね。
まとまってる方は紙の本のみのようです。
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