主人公がオッサンからティーンエイジャーへと変わったサイレントヒル3。
1、2と普通のおじさんとはいえ成人男性が主人公。身体的な面でも、過酷な戦闘を耐えられるのも納得でした。
が、今回は女の子。ちょっと違和感はあったのですが、彼女の場合はポテンシャルが高いのも納得の過去を持っています。
1作目の正当な続編であり、彼らのその後も描かれています。
女子が主人公でも容赦のない展開&クリーチャーは相変わらずです。ほんと完成度の高いシリーズです。
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あらすじ
悪夢にうなされ、目覚めたヘザー。そこはショッピングモールでうたた寝をしてしまっていたようです。
父にこれから帰ること電話で伝えたところに、ダグラスと名乗る探偵が現れます。彼はヘザーに会って欲しい人がいると言います。不審に思ったヘザーはトイレに入る振りをして裏から逃れます。
しかし、ヘザーが向かった先には正体不明のモンスターに遭遇。なんとか倒しますが、ショッピングモールは無人で同じようなモンスターが周囲をうろついています。
モンスターから逃れたヘザーは女性の姿を見つけ、声を掛けます。しかしヘザーを知っている様子の彼女はよく分からないことを話すばかりで状況が分かりません。
ストーリーに触れていますので、ネタバレ含みます。注意して下さい。
1の続編。ヘザーの過去。
主人公のヘザーは、ハリーに託されたアレッサの生まれ変わりともいえる存在です。シェリルと融合したアレッサが再びハリーに自身から切り離した存在を託したことになります。ハリーはその子どもを連れ帰り、ヘザーと名付けて育てます。
冒頭でのやりとりや、中盤で帰宅したヘザーの様子から、良い親子関係だったことがうかがえます。
そこへ現れたのが教団を進行するクローディア。
彼女はアレッサとは姉妹のような関係で、1作目のハリーの件があった後、彼に託されたアレッサの生まれ変わりであるヘザーを探しています。
教団にとってアレッサが生むはずだった「神」は重要なものだったのです。
17年の間で教団も分裂
17年前はダリアがアレッサを利用し、教団をまとめていたようですが、現在はクローディアとヴィンセントというふたりの司祭が対立しています。
クローディアは熱心な信仰心を持っていますが、アレッサに対する執着なのか、その信仰心故か、教団ないの信者にすら恐れられる存在です。
対してヴィンセントは、信仰心は持ちつつもクローディアのやり方には批判的。神の復活も望んではいません。そのためヘザーに協力するのですが、彼は彼でどっちにも消えて欲しいと思っているので、完全な味方でもありません。
狂信的ともいえるダリアの流れを汲んだのがクローディアともいえます。
しかし同じく狂信的で神を求めたふたりには違いがあります。ダリアは利己的な目的で神を召還しようとし、クローディアは救いを求めて神を召還しようとするのです。
それはクローディアのバックボーンにも関係していると考えられます。幼い頃から一緒に過ごしたアレッサを失い、高圧的な父親からも逃れられず、彼女がすがるのは信仰しかなかったのでしょう。
そしてそんなクローディアをヴィンセントは危険視していて、神をはらむヘザーも危険と考えるのです。
ヘザーにとっては良い迷惑ですが、ヴィンセントの考えはそこまでおかしなものではありません。得体の知れない「神」なんて召還してもらっても困りますからね。
わけもわからずに渦中の中心になってしまったヘザー
ヘザーは中心人物でありながらも、状況が分からず翻弄されます。
ハリーが彼女の出生についてきちんと話してはいませんでした。まだ17歳ですから、タイミングを計っていたとも考えられます。どうせなら、知らないまま生きていくほうがいいことでもありますから、ハリーの判断も理解できます。
というか、どう説明しろっていうんだこんな状況って感じですよね。
そして、帰宅したヘザーの目に映ったのは、無惨に殺されたハリーの姿。
結局、父親と娘はサイレントヒルについて、きちんと話すことなく永遠に別れることになってしまうのです。
ヘザーはクローディアを憎み、復讐を決意します。
しかし、物語が後半になっていくにつれて、ヘザーはアレッサのころの記憶を取り戻していきます。元はひとつである彼女ですがヘザーを形作るのは、父であるハリーと過ごしたこの17年。彼女は揺らぐことなく、決着を付けるためにサイレントヒルへと向かうのです。
このストーリーからも、ヘザーが弱々しい少女であったら成立しないものだというのが分かります。
モンスターだらけの街を生きのびる身体能力、途中で諦めない精神力は並のものではありません。怯えて逃げ隠れ、というタイプなら成立しないので、納得のキャラクターです。
ここから彼女がどう生きていくのか、先は描かれていません。
この後の人生を平穏に生きていってくれるのを願うばかり。
続編なので、教団のありようや過去の事件についての物語です。
1作目でつらい生活を強いられていたアレッサが、自らを葬り生まれ変わってもなお教団から狙われ、そしてついに解放されたことになります。
その代償はとても大きく、最愛にして唯一の家族を失うことになります。
決して幸せな終わりではありませんでしたが、1作目で苦しむままに生きながらえていた少女がようやく解放されたと思うと感慨深いです。
サイレントヒルシリーズは、「事件解決! 悪者やっつけた! めでたしめでたし」という類いのものではありません。
そこで描かれる人たちは敵であってもその過去に、悲しいものを秘めています。
1作目のリサを思えば、そこにいるモンスターですら元は何だったのかと考えてしまいます。
今回の悪役、クローディアもそうです。
彼女の取る手段はヘザーを苦しめるものばかりです。
しかし彼女が神を求めるのも、救済が欲しいからです。そしてそれを自分が望むのと同じく、他者も必要としていると思い込んでいるのです。
彼女の父親であるレナードは、救済は全員に与えるべきではないと思っています。
それに対しクローディアはみんなに救済を与えようとするのです。ありがた迷惑な話ですが、味方によっては彼女はみんなを救いたいと考えていると言えるでしょう。
ハリーに関しては彼女の場合、自分からアレッサを奪った張本人です。そういう意味での憎しみは少なからずあったと思われます。
象徴的な演出が魅力的
鏡のある部屋で、ヘザーが実際にいる部屋がどんどんと赤黒く染まり、鏡の中のヘザーがその色に冒されていく演出がありました。
鏡の中のヘザーは動けなくなります。動かしているヘザーは特に問題がなく、そのまま部屋を出ることができます。
各所に倒せないモンスターの「ヴァルティエル」が出現します。
ヴァルティエルは特にヘザーに攻撃をするわけでもなく、手の届かない場所に存在します。ゲームオーバーになると、ヴァルティエルがどこかにヘザーを引きずっていきます。
象徴的な存在で、彼にも意味があるようです。
こういった、特になくても問題がない演出は、サイレントヒルでは多用されています。普通のゲームだったら「なんかありそう」なところに別に何もないことも多いです。遊園地にあるウサギのロビー君の血まみれの着ぐるみとか。
深読みし放題な世界もまたサイレントヒルの魅力です。
3の攻略本で3作目までの関連や資料をまとめたものがついているものがあります。これはファン必読。
読み物としてもとても興味深くて、サイレントヒルの世界が好きならおすすめです。
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