「ヘンゼルとグレーテル」という童話をベースにしており、魔女の元から生き延びた兄妹が魔女ハンターとして成長したお話。
ダークファンタジー・アクションという感じで怖さはありませんがホラーの棚に分類されていることが多いです。バトルでややグロな部分もあるせいかな?
怖いのが苦手でも楽しめるはず。とてもおすすめ。
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あらすじ
幼い頃親に森に置き去りにされたヘンゼルとグレーテル。森をさまよいお菓子の家を見つけますが、そこは魔女の住処。ふたりは捕らえられますが、魔女を倒し難を逃れます。
その後ふたりは魔女を倒すハンターとして生きていくようになります。
子供が何人も行方不明になっている町の市長から依頼を受けてやってきたふたり。そこでは保安官がある女性を魔女だと宣言し処刑するところでした。しかしふたりは彼女の関与を否定。保安官を黙らせ、自分たちが魔女を狩ると宣言します。
手始めに町はずれの怪しげな家を調査しに向かいますが、そこに住む魔女は今回の件とは無関係で……。
ヘンゼル&グレーテル
2013年 アメリカ
監督:トミー・ウィルコラ
出演:ジェレミー・レナー、ジェマ・アータートン、ファムケ・ヤンセン
※ネタバレ注意
おとぎ話を題材にした魔女狩りアクション
凄腕ハンターとして名を馳せている彼らは、とにかく物理で魔女を倒します。
ショットガンとボウガンをメインにしつつ、かなり肉弾戦。これが面白い!
そもそも、魔術を使えば「魔女」扱いされる世界ですから、対抗する手段としてそういうものを使うはずがなかった!
とは言っても魔女たちも、そこまですごい魔法を使うわけではありません。頻繁に空飛びますけど、目立った魔法はそれぐらい? 黒い魔女のミュリエルは人を操ったりもできます。
市長の依頼を受けて、魔女狩りへ乗り出したふたりが直面する自分たちの過去
成長した兄妹が避けては通れない事件だったと言えます。
ミュリエルの策略にはグレーテルが不可欠。子供をおおっぴらに集めたのも、魔女狩りをしているふたりをこの地へと導くためでもあったのではと感じられます。攫ってくるにしても子供のようには行かない相手ですし。
思いがけない形で過去と向き合うことになったふたりですが、両親の真実をここでようやく知ることができました。
明るみになった事実は、ミュリエルが扇動したとはいえ町の人間に対して不信感を抱くような内容ですが、ふたりはそこはあまり気にしていない様子。
まぁ長く魔女狩りをやっていれば、保安官のような人間に出くわすことも多いでしょうし、理不尽に魔女として殺されるものの姿を何度も見てきているのではないかと想像できます。
そもそも映画として、その辺の人間ドラマはメインじゃないっていうのもあるんでしょうけどね。
魔女もだけど、人間たちの邪悪さがさりげなく描かれている
魔女狩りはそもそも、中世ヨーロッパで実際に行われていたものです。この映画の冒頭でも、ある女性が根拠なく魔女として裁かれようとしていました。民衆は保安官の言うことを信じ彼女を魔女と断罪します。
しかし実際彼女があの場で処刑されたとして、いなくなった子供たちは帰ってはきません。そうすればまた他に魔女がいる、と裁きは続いてしまうのです。
市長から案内され、ふたりは町はずれの怪しい家を調べに行きます。今回の件とは無関係ではありましたが、そこには実際に魔女が暮らしていました。
村人たちはそこは自分たちで調査に行かなかったんでしょうか。
メンツを潰されて保安官は怒り狂いますが、それはふたりに対しての感情であって、決して住民のために解決しようと動いているようには感じられませんでした。
実際に魔女の襲撃を受けた後も、グレーテルを狙うだけで、起きていることに目を向けている様子はありません。
兄妹の両親は集団心理の犠牲になった
完全に感情論で動く彼らはとても有能とは思えず、兄妹の両親を殺害した時も、同じような真理が動いているのでしょう。
実際の魔女狩りも信憑性は薄く、うわさ話が発端で魔女として処刑された女性も数多くいるそうです。
集団心理や、疑心暗鬼のせいで、あるはずのない危機を想像し、魔女として処刑されてしまうのです。
ふたりの母親も、ミュリエルの策略によって魔女狩りにあってしまいました。彼女曰く「悪い噂を流した」ということですが、
その程度で狩られてしまうんですよね。恐怖心というのは危ういもので、特に何かされたわけではなくても、近くに魔女が住んでいる、ということそのものが彼らを不安にさせるのです。
そこになにか不可解な事件が起きれば、さらにそれは高まり抑えが利かなくなってしまうのです。
題材になったヘンゼルとグレーテルの童話って?
ヘンゼルとグレーテルの童話は有名なので知らない人の方が少ないでしょう。
しかしわたしのように、確実に青い鳥と混ざって分けが分からなくなっている人もいるはず。
ヘンゼルとグレーテルは、母親(継母のこともある)が父親に子供たちを森に捨ててくるように命じます。父親は反対しますが、結局は妻に逆らえず子供たちを森に置き去りにして去って行きます。
森をさまよう子供たちはお菓子の家を見つけますが、そこは魔女の住む家で、ふたりは捕われてしまいます。兄のヘンゼルは食料として監禁、妹のグレーテルは魔女の手伝いをさせられます。
2人は隙を見て魔女をかまどに叩き込んで倒し、家へと帰ります。母親はすでにおらず、そこには父だけが暮らしていました。
再会を喜び家族はまた一緒に暮らすようになりました。
童話はこんな感じのあらすじです。時代によって色々と改変があるので母親は実母ではなく継母だったり、魔女が実は母親だったりとか、かなり違いがあるようですね。
森に置き去りにされる時に、家からパンをちぎって道に落とし、帰り道が分からなくならないようにするのはヘンゼルとグレーテルです。
青い鳥はチルチルミチル。かれらは自分たちで家を出て青い鳥を探しに行くのです。なんでか混ざるんですよね……。
流血は多めだけどグロすぎるというほどでもなく
至近距離ショットガンとか、森にワイヤー製の罠が仕掛けられていたり、バラバラに引き裂かれたりと、色々とグロい戦闘シーンが多いです。
でも不思議とそこまでイヤーな感じでもありません。テンポがいいからかな?
ジェレミー・レナーのヘンゼルはカッコいいし、グレーテルは女子ゴリッゴリの戦闘系女子だし、登場する武器もカッコいいです。
魔女も不気味ですが、なかなかバラエティに富んだ造形で、ボワワーンと魔術でごまかされる演出ありません。
黒い大魔女ミュリエルをX−MENのファムケ・ヤンセン(ジーン・グレイ役)が演じています。不気味さと妖婉さを併せ持った魔女の姿はかなりハマってました。
日本では劇場公開されずにDVD化した映画のようで、そこまで知名度ないのかな? もったいない。